ブラジルの外資規制の概要
西村あさひ法律事務所
弁護士 清 水 誠
1 外資規制の概要
ブラジルは、一般的に、外資に対して寛容な立場を採っており、外国投資家は、原則として、ブラジル企業の株式ないし持分の100%を取得することができる。但し、次表のとおり、一定の事業を営む会社に対する出資の制限や不動産投資の制限が存在する。
規制の種類 |
規制の内容 |
対象業種等 |
外資の禁止 |
外資は出資不可 |
原子力事業、医療サービスの一部、郵便及び電信事業、国内線航空事業及び宇宙事業。 ※ 医療サービスについては、2015年の憲法改正により、投資可能な範囲が一部拡大した。 |
外資の制限 |
外資の出資は出資割合制限その他一定の制限に服する |
マスメディア及び鉱業を営む会社や金融機関等。 たとえば、マスメディア会社(新聞社及び放送事業者)の発行済株式及び議決権の70%以上はブラジルの個人に直接又は間接に保有されなければならず、編集権を含む経営権はブラジル株主に留保されなければならない。 また、外資による金融機関の株式の取得は、大統領命令によりブラジルの公益に資すると認められた場合を除き禁止されている。 |
不動産投資の制限 |
外資企業による土地や不動産の所有又は賃貸借に当局の許可が必要 |
アマゾン地域を含む一定の地域の土地の所有又は賃貸借について、植民農地改革院(INCRA)の事前許可が必要。 これに加え、国境周辺の土地の所有、賃貸借等について、国防評議会(CDN)の事前許可が必要。 |
2 外国為替規制の概要
外国投資法(1962年法第4131号)により、外国資本は、ブラジルへの資金の持込み、利益の国外送金、本国への投資回収及び利益の再投資のそれぞれの時点において、オンライン登録システムを通じ、ブラジル中央銀行に登録しなければならず、当該登録が行われていない場合、国外からブラジルへの資金の送金及びブラジルから国外への資金の送金ができないとされている。
また、ブラジルの会社が外国会社に対して支払う特許権その他の知的財産権の使用に対するロイヤルティ及び技術移転契約の対価は、その金額が法令に定める金額の範囲内であり、かつ特許権等ライセンス契約や技術移転契約を工業所有権院(INPI)に登録した場合に限り、海外に送金することができる。
以 上