◇SH0693◇コロンビア労働法の基礎 伊藤 豊(2016/06/13)

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コロンビア労働法の基礎

西村あさひ法律事務所

弁護士 伊 藤   豊

 

 本稿においては、コロンビアにおける労働法制の特徴を概括する。

1.  概要

 コロンビアの労働法制のポイントは、次表のとおりである。

 

  概 要 備 考

労働契約

  1. 主な形態は以下の通り。
  2. ・ 有期契約(期間は3年を超えてはならない)
  3. ・ 期間の定めのない契約
  4. ・ 仕事の完了日を終期として期間を定める契約(更新はできない)
  1. ・ 有期契約は書面によって締結される必要があり、書面によらなければ、期間の定めがないものとみなされる。
  2. ・ 有期契約を更新しない場合は、契約終了30日前の事前通知が必要である。
  3. ・ 期間の定めのない契約を正当事由なしに解除する場合、使用者は労働者に対して後記の補償金を支払うことで、予告なく解除できる。

労働時間

原則として、1日の労働時間は8時間を、1週間の労働時間は48時間を超えてはならない。ただし、労働省の許可があれば、1日に追加で2時間、1週間で12時間の時間外労働をさせることが可能である。

時間外労働に関する規制は、マネジメントクラスの労働者には適用されず、それらの者に対する時間外労働の割増賃金の支払いも不要である。

有給休暇

1年間勤続した労働者には15日の有給休暇が付与される。

有給休暇の繰越しは2年間のみ可能だが、特殊な事情がある場合には4年間可能である。

退職積立金

毎年一定の時期に、1ヶ月分の給与に相当する金額を退職積立金に積み立てる必要がある。

毎年一定の時期に、退職積立金の12%に相当する利息を、労働者に対して支払う必要がある。

労働契約の解除

使用者及び労働者のいずれも、原則として、正当事由の有無を問わず労働契約を解除することができる。

使用者が正当事由に基づく労働契約の解除を行うためには、労働者の防御のための聴聞の機会やその他の事前手続を経なければならない。そのような手続が履践されなければ、正当事由がない解除と扱われる。

整理解雇

労働者の整理解雇は可能であるが、6ヶ月間に、雇用される労働者の数に応じて定められた右記の割合を超えて人員削減を行う場合には、労働省の許可を得る必要がある。

労働者数 : 割合
11~49人 : 30%
50~99人 : 20%
100~199人 : 15%
200~499人 : 9%
500~999人 : 7%
1000人以上 : 5%

正当事由なく解雇する場合の補償金

使用者が正当事由に基づいて労働者を解雇する場合は、補償金の支払は不要である。他方、正当事由がない場合、使用者は当該労働者に対し一定の補償金を支払う必要がある。

  1. ・ 有期契約の場合の補償金は、契約終期までの給与に相当する金額。
  2. ・ 期間の定めのない雇用契約の場合の補償金:①賃金の額が最低賃金の10倍よりも少ない場合は、原則として、最初の1年間(1年未満を含む。)は30日分、それ以降の年は1年間あたり20日分(1年未満の期間は、その期間に比例した日数)の給与に相当する金額、②10倍以上の場合は、原則として、最初の1年間(1年未満を含む。)は20日分、それ以降の年は1年間あたり15日分(1年未満の期間は、その期間に比例した日数)の給与に相当する金額。

 

2.  事業譲渡による使用者の交代

 事業譲渡により使用者が交代した場合、労働者との間の労働契約は新たな使用者に自動的に承継される。労働法上、使用者が事業譲渡について労働者と協議したり労働者へ通知をする必要はない。使用者の交代に際して、労働者は、使用者に対して、退職積立金の前払いを請求することができる。

 

以 上

 

(注)本稿は法的助言を目的とするものではなく、個別の案件については当該案件の個別の状況に応じ、日本法又は現地法弁護士の適切な助言を求めて頂く必要があります。また、本稿に記載の見解は執筆者の個人的見解であり、西村あさひ法律事務所又はそのクライアントの見解ではありません。

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