◇SH0466◇インドネシア:非居住役員に就労許可の取得を義務付ける規定等の削除 前川陽一(2015/11/06)

未分類

インドネシア:非居住役員に就労許可の取得を義務付ける規定等の削除

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 前 川 陽 一

 

 2015年6月29日付で制定された労働大臣規則2015年第16号(以下「旧規則」という。)は、従前の外国人の就労形態に大きな変更を迫り、外資企業に過大な負担を強いるものであったため、各方面からの強い反発を受け、早くも同年10月23日付労働大臣規則2015年第35号(以下「改正規則」という。)により改正されることとなった。改正規則は、同日よりただちに施行されている。

1. 非居住役員に就労許可の取得を義務付ける規定の削除

 旧規則は、インドネシア国外に居住する取締役やコミサリスであっても、就労許可(IMTA)を取得すべき旨明文で義務付けた。一部の業種を除いて、取締役又はコミサリスとなる者に現地居住要件は課されていないことから、海外本社の役職員が当該国に居住したままインドネシアの就労許可を取得せずに現地法人の取締役又はコミサリスを兼任するという形態は、従前から少なからずとられていた。旧規則は非居住の取締役・コミサリスに現地居住を求めるものではなかったものの、旧規則の施行により現地法人は非居住役員を退任させるか、あるいは非居住役員のために就労許可を取得するかの選択を迫られることになった。

 改正規則は、非居住役員に就労許可の取得を義務付ける規定を削除したうえ、非居住役員が就労許可を取得する義務を負わないことを明記した。旧規則制定以前にも、労働当局の立入り検査において非居住役員についても就労許可を取得するよう指導がなされたとの事例が報告されていたが、改正規則により今後はこのような指導がされることがないことも明らかにされたといえる。

 なお、外国人を雇用する場合、就労許可1件につき1か月あたり100米ドルの補償金(DKP-TKA)を支払わなければならないが、改正規則施行前に非居住役員のために就労許可を取得して補償金を支払っていた場合に、支払い済みの補償金の返還を受けることはできない旨の規定が置かれている。

2. 外国人従業員と現地従業員の雇用割合を定めた規定の削除

 旧規則は、外国人従業員1人に対して少なくともインドネシア人従業員10人を雇用すべき旨定めていた。本規定では、会社の業種や規模に応じた考慮は図られておらず、さらに駐在員事務所も対象から除かれていなかった。経過規定の定めも置かれていなかったこともあり、進出済みの企業はもちろん、まさに進出を検討していた企業をも動揺させたであろうことは想像に難くない。

 改正規則は、かかる規定を削除した。もっとも、旧規則以前から、投資調整庁における外資企業に対する投資基本許可に際しては、外国人雇用に対し一定比率のインドネシア従業員を雇用することが事実上求められてきたところであり、この投資調整庁における事実上の運用は引き続き行われるものとみられる。

3. 短期就労許可の対象となる一時的業務の範囲の縮減

 旧規定は、短期就労許可の対象となる一時的業務の範囲として8つの活動を指定していた。この一時的業務に該当するものとされた活動のなかに、「インドネシアにある本社又は駐在員事務所との会議への参加」が掲げられていたことから、海外企業の役職員がそのインドネシア現地法人や駐在員事務所を訪問して会議に出席する場合でも、その都度、短期就労許可が必要となるのではないかという問題が生じた。

 改正規則は、短期就労許可の対象となる活動を(a)映画の制作、(b)インドネシアにある支社の監査、生産品質管理又は検査で1か月を超えるもの、及び(c)機械・電気機器の据付け、アフターセールスサービス又は試作品に関連する作業の3つに縮減した。その結果、現地法人や駐在員事務所での会議出席のために就労許可を取得する必要はなくなった。

 

タイトルとURLをコピーしました