◇SH0584◇国税庁、新たな会社役員責任賠償保険の保険料の税務上の取扱い 浜崎祐紀(2016/03/07)

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国税庁、新たな会社役員賠償責任保険の保険料の税務上の取扱い

岩田合同法律事務所

弁護士 浜 崎 祐 紀

1.新たな会社役員賠償責任保険の保険料の税務上の取扱い

 今般、国税庁は、会社負担の会社役員賠償責任保険について、その一部の税務上の取扱いを変更した。

 すなわち、これまで、会社役員賠償責任保険のうち、役員が株主代表訴訟で敗訴して賠償責任を負担する場合の危険を担保する部分(以下「代表訴訟担保部分」という。)の保険料については、給与課税と取り扱われてきたが、今般、代表訴訟担保部分を含む新たな会社役員賠償責任保険の保険料について、会社が一定の手続を行うことにより、適法に負担した場合、役員個人に対する給与課税を行う必要はないとした。

 

2.従前の会社役員賠償責任保険の取扱い

 これまで、会社役員賠償責任保険のうち、代表訴訟担保部分の保険料を会社が負担することは、会社法上問題があるのではないかとの指摘がなされており、そのため、会社役員賠償責任保険については、従前より、普通保険約款等において、代表訴訟担保部分を免責とした上、別途、当該部分を保険対象に含める旨の特約(以下「代表訴訟特約」という。)を付帯する形態で販売され、代表訴訟特約部分の保険料は役員個人が経済的に負担すべきものとされてきた。よって、代表訴訟特約部分の保険料を会社が負担した場合は、会社から役員に対して経済的利益の供与があったものとして給与課税の対象とされてきた。

 これに対し、第三者から役員に対し損害賠償請求がなされ、役員が損害賠償責任を負担する場合の危険を担保する部分(以下「普通約款部分」という。)に係る会社負担の保険料については、会社の経営活動からみて、その会社にとって合理性があり、かつ、課税上の弊害も生じない場合は、役員個人の給与課税を行う必要はないとされてきた。

3.新たな会社役員賠償責任保険の取扱い

 このような状況下において、経済産業省の研究会は、平成27年7月24日付で公表した「コーポレート・ガバナンスの実践~企業価値向上に向けたインセンティブと改革~」(以下「本件報告書」という。)の中で、会社が利益相反の問題を解消するための次の手続を行えば、会社が代表訴訟担保部分に係る保険料を会社法上適法に負担することができるとの解釈を示した(本件報告書別紙3(11~12頁))。

  1. ⑴ 取締役会の承認
  2. ⑵ 社外取締役が過半数の構成員である任意の委員会の同意又は社外取締役全員の同意の取得

 本件報告書における会社法上の解釈の明確化を踏まえ、代表訴訟特約部分の保険と普通約款部分に係る保険を区別する必要がなくなることから、今後は、両者を区別しない新たな会社役員賠償責任保険の販売が想定されることになるところ、今般、国税庁は、会社が上記及びの手続を行うことにより、新たな会社役員賠償責任保険の保険料を会社法上適法に負担した場合、役員に対する経済的利益の供与はないと考え、役員個人に対する給与課税を行う必要はないとし、他方で、上記(1)及び(2)の手続を履行していない会社役員賠償責任保険の保険料については、従前の取扱いのとおり、役員に対する経済的利益の供与があったと考え、役員個人に対する給与課税を行う必要があるとの取扱いを示した。

(注1) ただし、会社の経営活動からみて、その会社にとって合理性があり、かつ、課税上の弊害も生じない場合
(注2) ただし、取締役会の承認及び社外取締役が過半数の構成員である任意の委員会の同意又は社外取締役全員の同意の取得がある場合
(注3) 明示的な取扱いが示されたわけではないが、上記国税庁の取扱いの趣旨を敷衍すると当該取扱いとなると解される
  普通約款部分に係る保険 代表訴訟特約部分に係る保険 新たな会社役員賠償責任保険

従来の取扱い

給与課税としない
(注1)

給与課税とする

 

今後の取扱い

給与課税としない
(注1)

給与課税としない
(注2)(注3)

給与課税としない
(注2)

 このように、代表訴訟特約に係る保険料の取扱いに関する会社法上の解釈が明確化されたことに伴い、一定の要件のもと代表訴訟担保部分に係る保険料に対しては給与課税しないこととされたため、以前より、会社において、役員賠償責任保険の保険料を負担しやすい環境になったといえる。

以 上
 
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