インドネシア:ライセンス契約の登録に関する規則の施行
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 坂 下 大
去る2016年2月24日付で、知的財産ライセンス契約の登録に関する規則(2016年第8号。以下「本規則」という。)が施行された。本稿ではその概要を紹介する。
1. インドネシアにおける知的財産権・ライセンス
インドネシアにおいて法律上認められている主な知的財産権としては、著作権、特許権、商標権、意匠権、集積回路配置に関する権利、及び営業秘密に関する権利が存在し、著作権は著作権法、特許権は特許法といった具合に、それぞれ対応する法律がこれらに関する事項を所管している。
これら知的財産権のライセンスの場面に着目してみると、各法律において、ライセンス契約の登録の制度というものが設けられている。例えば特許権についてみると、特許法上、特許に関するライセンスを行う場合には、ライセンス契約を法務人権省知的財産権総局(以下「知的財産権総局」という。)に登録する必要があり、かかる登録がなければライセンス契約の内容を第三者に対抗できないとされている。他の知的財産権についても、若干の差はあるが、各法律において概ね同様の制度が設けられている。ところが、各法律のレベルでは、かかる登録制度の詳細は施行規則等の細則で定めるとされているものの、これまではその細則が制定されていなかった。それゆえ、実務上、登録申請の受理まではなされていたが、実際の登録まではなされていなかったところである。本規則の施行によって、ようやくライセンス契約の登録制度の運用が開始されることになる。
2. 本規則の概要
著作権及びその関連権利、特許権、商標権、意匠権、集積回路配置に関する権利、並びに営業秘密に関する権利に係るライセンス契約が本規則による登録の対象となる。登録の申請はライセンサー又はライセンシーのいずれによっても行うことができるが、申請者又は当該知的財産権の保有者が外国(法)人である場合には、インドネシアの代理人を通じてこれを行う必要がある。登録の申請は知的財産権総局に行うところ、制度上はオンラインでの申請も可能である。
また、登録の申請に際しては、以下の書類等を提出する必要がある。
- ⑴ ライセンス契約の写し等
- ⑵ 対象知的財産権の内容に係る一定の証明書の写し
- ⑶ 代理人による申請の場合には、委任状の原本
- ⑷ 対象知的財産権が一定の条件(有効に存続していること、国家の利益を害するものではないこと等)を満たしている旨の宣誓書
- ⑸ 登録費用の領収証の原本
登録の申請後、10日以内に当該申請が法定の要件を満たしているか否かの審査が行われ、問題がなければ登録がなされ、一定の事項が公開される。登録は5年間有効であり、当該期間経過後は改めて登録の手続を行う必要がある。