企業内弁護士の多様なあり方(第13回)
-第5 法務部門の組織の作り方(上)-
BNPパリバ証券株式会社法務本部長
弁護士 中 島 史 郎
第5 法務部門の組織の作り方(下)
2 社員型モデル
日本の企業に伝統的に多く見られるモデルでは、法務部門のメンバーはロイヤーであることを資格要件にしない。
企業内の他の部門と同じく、学校新卒で当該企業に採用された者の中から、一般的なローテーション人事の一環として一定期間のみ配置された者により法務部員が構成される。
法務部門と他部門との間の人事異動が定期的に行われ、法務部門の長(ヘッド)もロイヤーでなく、当該企業内のローテーション人事の一環として他部門から来た社員が一定期間務める。
社員型モデルは,終身雇用制を前提に総合職として採用した優秀な社員(その中には、大学の法学部を卒業した者が相当程度含まれる。)をローテーション人事で、社内の各部門に配置して行く日本における伝統的な人事政策・枠組みを前提とする。
3 中間型
上記のロイヤー型モデルと一般社員型モデルは、対極の典型的モデルを説明したものであり、その間に様々な中間形態の組織がある。
日本の企業においても、一般社員型モデルの修正の動きが見られる。その前提は、ビジネス、特に国際ビジネスの複雑化に伴い、法務業務が専門性の高い業務であることの認識の高まりによるものであろう。法務部門配属人員の頻繁なローテーション人事を避ける動きもあり、あるいは弁護士の採用も年々増加している。
弁護士の採用についても、従来型の人事制度を前提として、多くは司法修習新卒ないしこれに準じたジュニアな者の採用であるが、法律事務所での経験5年、7年、あるいはそれ以上の者の中途採用事例も一定程度安定して存在している。少数であるが、弁護士を法務部門の長とする企業も現れた。