インドネシア:外国人による居住用不動産の取得にかかる最低価格規制
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 前 川 陽 一
居住外国人による居住用不動産の所有に関する政令2015年第103号(以下「政令103号」という。)の規定を受けて、農地・都市計画大臣令2016年第13号(以下「本規則」という。)が2016年3月21日制定された。本規則は、同日より施行されている。政令103号は、インドネシア国内における外国人による居住用不動産の取得の要件や使用権(Hak Pakai)の期間等について従前の規制を改めたものであるが、本規則はさらに外国人が購入できる居住用不動産の最低価格を地域ごとに定めた。なお、政令103号に関する解説は、坂下大弁護士による前稿「外国人による居住用不動産の所有に関する新政令」を参照されたい。
本規則は、外国人が購入可能な居住用不動産の最低価格を以下のとおり定めた。
地域 |
戸建て住居 |
マンション居室 |
ジャカルタ特別州 |
100億ルピア |
50億ルピア |
バンテン州 |
50億ルピア |
10億ルピア |
西ジャワ州 |
50億ルピア |
10億ルピア |
中部ジャワ州 |
30億ルピア |
10億ルピア |
ジョグジャカルタ特別州 |
30億ルピア |
10億ルピア |
東ジャワ州 |
50億ルピア |
15億ルピア |
バリ州 |
30億ルピア |
20億ルピア |
西ヌサトゥンガラ州 |
20億ルピア |
10億ルピア |
北スマトラ州 |
20億ルピア |
10億ルピア |
東カリマンタン州 |
20億ルピア |
10億ルピア |
南スラウェシ州 |
20億ルピア |
10億ルピア |
その他の地域 |
10億ルピア |
7億5千万ルピア |
(10億ルピア=約800万円)
購入最低価格の設定に加え、本規則は外国人が購入可能な物件を新築に限り、さらに土地所有者又は開発業者から直接に購入しなければならないものとした。すなわち、物件の価格にかかわらず外国人は中古物件を購入できない。
インドネシアでは土地の利用権原として様々な権利態様が法令上定められているところ、建物所有を目的とした土地の利用権原としては建設権(Hak Guna Bangunan)が設定されることが多く、外国人が保有可能とされる使用権(Hak Pakai)上の物件はそもそも見つけるのが難しい状況である。
昨年来、規制緩和政策の一環として期待されていた外国人不動産所有制度の改定であったが、結局のところ外国人による不動産取得を誘引する効果は乏しいと言えそうだ。