メキシコの企業結合規制
西村あさひ法律事務所
弁護士 根 立 隆 史
1 根拠法
メキシコ企業結合規制の根拠法は、連邦競争法(The Federal Economic Competition Law)である。
2 執行機関
メキシコの企業結合の執行機関としては、連邦競争委員会(The Federal Economic Competition Commission)と連邦電気通信機関(The Federal Institute of Telecommunications)の2つが存在する。
連邦電気通信機関が電気通信及び放送分野における企業結合審査を担当し、連邦競争委員会がそれ以外の分野についての企業結合審査を担当するという役割分担がなされている。
3 届出の対象
「企業結合」(concentration)が生じる場合にクロージング前の届出が義務とされるところ、連邦競争法第61条によれば、「企業結合」とは、「合併、支配権の取得その他の企業等が競争事業者等と合体する一切の行為」と極めて広く定義されており、「企業結合」が届出基準を満たす限り、すべて届出対象とされる(第61条)。
なお、ジョイント・ベンチャー(JV)の組成については法令上明確には「企業結合」に該当する旨の規定はないものの、JVの組成も「企業結合」に該当するとするのが実務上の取扱いである。
4 届出基準(第86条1項~第3項)
以下の3つのいずれかに該当する場合に届出義務がある。
- メキシコにおいて生じる対象取引の価値がメキシコシティの最低1日賃金(MGDW)の1800万倍(1,314,720,000メキシコペソ)超
- MGDWの1800万倍(1,314,720,000メキシコペソ)超のメキシコ所在の資産又はメキシコへの売上を有する当事会社の資産又は株式の35%以上の取得
- 2つ以上の当事会社が単独又は合算で、MGDWの4800万倍(3,505,920,000メキシコペソ)超のメキシコ資産又は売上を有しており、かつ、MGDWの840万倍(613,536,000メキシコペソ)超のメキシコ所在の資産又は払込資本(paid-in-capital)を取得する場合
なお、総資産や売上については、当事会社の直近年度の数値で判断される。また、当事会社単体の数値ではなく、当事会社グループに属する会社すべての数値を合算して判断される点に留意が必要である。
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