◇SH0689◇企業内弁護士の多様な在り方(第22回)-第8 企業内弁護士の「仕事の内容」(中) 吉田哲郎(2016/06/08)

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企業内弁護士の多様な在り方(第22回)

-第8 企業内弁護士の「仕事の内容」(中)-

明治安田生命保険法務部上席法務役

弁護士 吉 田 哲 郎

第8 企業内弁護士の「仕事の内容」

2  企業法務の仕事の内容―中核的な仕事と拡大された仕事

(2) 中核的な仕事(その2)

 次に、企業法務は、すでに「臨床法務」にとどまらず「予防法務」(問題発生の予防)をもその中核的機能に収めているというべきであるから、事前に法的リスクを排除ないし極小化するため、企業の事業活動全般に対して法的意見を述べたり、法的正当性を確認したりする業務は中核的な仕事というべきであろう。具体的には、各部署の業務遂行に伴って想起され、または惹起した法律問題に対する法律相談対応や契約書の事前審査などである。

 契約書関連業務においては、このような支援的業務にとどまらず、契約交渉に乗り出して法的観点を指摘したり代替案を提示したりする遂行的業務、すなわちアドバイザリー機能を超えて自らが対外業務の当事者となる場合もあると思われる。このような遂行的業務も、企業法務の重要性の高まりに伴い、企業によっては、その中核的業務として位置付けている場合もあるだろう。

 なお、企業法務の黎明期には、企業内での法務機能の重要性があまり認識されていなかったり、企業法務要員に制約があったりしたため、法務部門は定型的株式事務、定款・社内規程の管理など比較的単純な業務のみを自ら行い、高度な専門的知識を要する業務は社外弁護士等に依頼してきたように見受けられる。しかし、近時の企業法務は、相当程度高度な専門知識を要する仕事も自ら行うようになってきており、これに伴い、社内で対応が困難なさらに高度な業務を社外弁護士に依頼するようになってきている。これにより、定型的株式業務、社内規程管理などはすでに一般業務化され、企業法務の仕事とは認識されていないのではないかと思われる。また、株主総会対応は、経験的技能によって相当程度対応可能なものであるから、企業法務から分離された専門部署で行う場合が多いかもしれない。ただし、従前からの経緯により、なお、法務部門が定型的株式業務、定款・社内規程管理および株主総会対応を行っている場合もある。

(3) 拡大された仕事

 企業法務が臨床法務・予防法務から戦略法務・経営法務(戦略的経営管理体制への法的関与、迅速果敢な経営の意思決定に対するアドバイザリー機能)へと進化するに伴って、その業務を拡大させている場合もあろう。なお、臨床法務・予防法務の仕事ではあるが、法務部門が積極的に遂行的業務を行うという意味で業務範囲が拡大されている場合もあることは「中核的な仕事」の項で整理した。

 戦略法務・経営法務としての機能を果たすことに向けられた仕事としては、①取締役会議案や経営会議・常務会議案に対する法的なチェックやアドバイス、②コンプライアンス・内部統制システムの構築・整備・運用、③法的リスク管理体制の構築・運用、④合併等による企業再編に対する法的支援、⑤グループ企業の再編、グループ企業全体の法務一元管理、⑥関連立法に対する業界団体を通じた意見具申などが考えられる。

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