企業内弁護士の多様なあり方(第28回)
-「仕事の段階」(判断、執行)(下)
オリックス不動産株式会社
弁護士 真 銅 孝 典
第10 企業内弁護士の「仕事の段階」(判断、執行) (下)
3 「弁護士」としての立場と「一従業員」としての立場
所属部門内においては、あくまで「一従業員(部員)」であり、弁護士として、特別な扱いをされることは稀であると思われる(弁護士としての研鑽を積ませていこうという配慮はあるだろうが)。ところが、他の部門(経営幹部を含む)からは、法律専門家としての弁護士と見られることがあり、「弁護士としての見解を聞かせてもらいたい」というような対応を求められることがある。この点について、多くの一般従業員型弁護士(特に新人)が、他部門からの期待値と現在の自分の力量とのギャップに直面しているのではないかと思われる。この対応としては、日々研鑽を積んでいくことで解消していくことは言うまでもないが、経験不足から回答できない点があればその点を素直に申告し、上席者や顧問弁護士へ相談しつつ問題を一つずつ解決していくしかないと考えられる。弁護士としてのプライドや信頼に関わる問題ではあるが、企業内における「弁護過誤」を回避することの方がより重要であることを意識し、現時点における自身の力量を適切に把握しなければならない。
また、法律事務所勤務経験が相当程度ある弁護士であっても、所属企業の方針を理解して判断・執行をしなければ企業内弁護士としてワークしないことに留意する必要がある。例えば、A、Bいずれの選択も適法な判断であるしても、所属会社・部門の方針として、Aを選択していないということはよくある。法的判断、執行の前提として、所属企業・部門の方針をよく理解しおくこともまた重要になる。