ブラジルの贈収賄防止規制の基礎
西村あさひ法律事務所
弁護士 安 部 立 飛
1 はじめに
トランスペアレンシー・インターナショナルが公開している腐敗認識指数によると、中南米では、ウルグアイ、チリが腐敗度が低いと判断されてはいるものの、ほとんどの国が腐敗度が高いと判断されており、ブラジルは対象168ヶ国中76位にランクされている[1]。
実は、2014年版[2]では、ブラジルは69位にランクされていた。したがって、2015年版では順位が下がったことになる。これは、ブラジルで2014年に開始されたラヴァ・ジャト作戦(ポルトガル語で「洗車」の意)による一連の事件摘発が影響しているものと思われる。ラヴァ・ジャト作戦は贈収賄等組織犯罪の一斉摘発を目的とする作戦で、その作戦の結果摘発された事件のうち最も世を騒がせたのが、中南米最大の石油会社であるペトロブラス社と国会議員の癒着である。ペトロブラス社の幹部や国会議員らが多数逮捕され、大統領の退陣を求める大規模なデモまで誘発したこの事件は、ブラジルの政財界を揺るがしただけでなく、外国の経済にも大きな影響を与えた。
このような近時の状況を踏まえた上で、以下では、ブラジルの贈収賄防止規制の概要を説明する。
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