◇SH0994◇実学・企業法務(第21回) 齋藤憲道(2017/02/02)

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実学・企業法務(第21回)

第1章 企業の一生

同志社大学法学部

企業法務教育スーパーバイザー

齋 藤 憲 道

 

(3) 物(モノ)

1) 棚卸資産

 棚卸資産には次の資産が含まれる。現金化するのには、営業活動を必要とする。

  〔主な棚卸資産〕
   商品 (取引先から仕入れた完成品)
   製品 (自社生産した完成品)
   原材料(取引先から仕入れた原材料)
   半製品(生産中の未完成品で、その状態でも販売可能)
   仕掛品(生産中の未完成品で、その状態では販売不能)
   貯蔵品(荷造用品、事務用消耗品、工場用消耗品等)

(1) 商品・材料等の仕入れ
 棚卸資産は、同一の仕入先から同種の物品を繰り返し仕入れることが多いので、仕入先との間で取引基本契約を締結し、その契約に基づいて個別契約[1]が発注・納入のつど取り交わされる。取引基本契約は、頻繁に発生する取引の中の共通の取引条件を抽出して、1つの契約にしたものである。
 指定納期に納入された物品は、そのつど受入検査を行い、(a)仕様に合致すること、(b)数量が発注通りであることを確認するのが原則である。しかし、仕入先の生産態勢を確認しても懸念事項がなく、かつ、一定期間問題なく取引した実績がある場合は、受入検査を省略して無検査に移行することがある。ただし、納品に不具合が発見されると、受入検査(場合によっては全数検査)を再開する。

(2) 棚卸し
 棚卸資産が実在することを確認するために、期末や月末に帳簿上の理論在庫と倉庫の実在庫を照合する「棚卸し」を行い、実在庫を基にして決算書が作成される。
 市場で販売し易い小型で高価な商品は、盗難にあう可能性が大きいので、特に厳重に管理する。

(3) 在庫評価
 棚卸資産の評価は、次の(a)と(b)を組み合わせて行う。

  1.  (a) どの時期の価格を用いるかに着目すると、①個別法、②先入先出法、③総平均法、④移動平均法、⑤最終仕入原価法、⑥売価還元法等がある。
  2.  (b) 決算時の価格が取得時より低下した場合の対応に着目すると、①取得時の原価で評価する原価法と、②取得原価と時価を比較して、低い方の価格で評価する低価法がある。

 実際の棚卸資産の評価は、(a)と(b)を「先入先出法による原価法」「総平均法による原価法に基づく低価法」等のように組み合わせて行う。この評価は会社の利益に大きな影響を与えるので、評価方法の継続性の維持が重要である。なお、会社設立時には「棚卸資産の評価方法の届出書」を税務署長に届け出なければならない[2]
 棚卸資産は、物理的要因(経年劣化等)と経済的要因(市場価格の上下変動)によって価値が大きく変動するので、これらを適切に決算に反映するように管理する。

  1. (注) 国際会計基準は低価法を採用する。陳腐化した滞留商品や、市場価格が下がった原材料等は、低価法を採って評価減しないと、利益を過大に計上することになる。 


[1] 個別の発注・納品ごとに、品番・数量・単価・納期・納入場所等を定める。

[2] 法人税法施行令29条2項、155条の6、188条8項

 

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