◇SH1041◇実学・企業法務(第29回) 齋藤憲道(2017/03/02)

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実学・企業法務(第29回)

第1章 企業の一生

同志社大学法学部

企業法務教育スーパーバイザー

齋 藤 憲 道

 

(4) 情報(知的財産、経営情報)

1) 知的財産権

(2) 知的財産権の保護期間
 知的財産権の存続期間は、その種類や国によって若干異なる。
 日本では、特許権は原則として出願から20年(存続期間の延長登録があった農薬・医薬品は最長25年)、実用新案権は出願から10年、意匠権は設定登録から20年、植物新品種に関する育成者権[1]は登録から25年間(永年性植物[2]は30年)である。
 日本の主な権利について次に概観する。

〔特許権〕
 特許権は、独占禁止法により例外的な特権が付与されるものであり、その代償として、出願後、一定期間が経過すると発明等の内容が一般に公開される。日本では特許法(64条)の出願公開制度により、出願から1年6ヵ月を経過すると公開特許公報に出願書類全文が公開される。ライバル企業はこれを調査・分析して同一の開発投資を回避しつつ競争優位に立つための別の技術開発等を行うことができるので、特許制度は、国全体として発明の創造を効率的に進め、開発競争を促進する役割を果たしている。
 なお、現在の日本には、大半の国が導入している秘密特許制度が存在しない。従って、外為法が輸出を禁じている技術も、原則として出願公開制度により公開される。

  1. (注) 米国の秘密特許に係る情報は、「防衛目的のためにする特許権及び技術上の知識の交流を容易にするための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定」によって守られている[3]

〔商標権〕
 企業のブランド戦略で中心的役割を果たす商標権の保護期間は、登録から10年間だが、登録更新手続きをすることにより10年単位で何回でも更新できる。
 ただし、日本国内で3年前から指定商品・指定役務に使用されていない商標は、不使用取消審判請求により登録が取り消される(商標法50条)。

〔著作権〕
 著作権の保護期間は、無名・変名・団体名義は公表後50年、映画の著作物は公表後70年(創作後70年以内に公表されなかつたときは、創作後70年)と長い[4]

〔営業秘密〕
 秘密管理性・有用性・非公知性の3要件を満たす技術・販売等の経営情報は、この3要件が維持される限り、無期限に保護される。
 なお、営業秘密の使用行為に対する侵害の停止・予防を請求する事案ごとの権利は、侵害の事実及び侵害者を知った時から3年の消滅時効と、不正使用の開始から20年の除斥期間のうち早く到来する時期まで行使できる[5]



[1] 権利者は、登録品種の種苗・収穫物・加工品の販売等を独占することができる。

[2] 果樹・材木・観賞樹等

[3] 中山信弘『工業所有権法(上)特許法〔第二版増補版〕』法律学講座双書(弘文堂、2000)200頁

[4] 著作権法54条。著作権の保護期間は国によって異なり、個人の死後の保護期間は日本・中国50年、インド60年、米国・EU加盟国70年、コロンビア80年、メキシコ100年等である。TPP協定は死後70年とすることを求める。

[5] 不正競争防止法15条

 

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