◇SH1045◇インドネシア:公開会社の合併に関するOJK新規則 坂下 大(2017/03/03)

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インドネシア:公開会社の合併に関するOJK新規則

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 坂 下   大

 

 インドネシア金融庁(以下「OJK」という。)による、公開会社の合併に関する新規則(2016年74号、以下「新規則」という。)が2016年12月28日から施行されている。

 

1. インドネシアにおける合併制度

 日本と同様、インドネシア会社法は、組織再編の一手法として合併の制度を設け(日本法上の吸収合併及び新設合併にそれぞれ対応する2類型がある。)、その手続に関する詳細を定めているところ、「公開会社」(簡単に述べると、(i)300名以上の株主を有し、かつ払込資本の額が30億ルピア以上の会社、又は(ii)株式等の公募を行った会社を意味する。)が関与する合併等(以下「公開会社の合併」という。)については、別途資本市場関連法令の定めにも従う必要があるとされている。そして、会社法の合併手続に関する規定は原則として公開会社の合併にも適用されるが、会社法の規定と異なる定めを資本市場関連法令が設けている場合には、かかる資本市場関連法令の規定が優先する旨が、会社法において定められている。従前は、かかる公開会社の合併に関する資本市場関連法令として、(金融行政がOJKへ移管される前にこれを所管していた官庁である)資本市場監督庁(BAPEPAM-LK)の1997年規則No. IX.G.1(KEP-52/PM/1997、以下「旧規則」という。)が適用されていたが、新規則の施行によって旧規則は失効し、今後は新規則のみが適用されることになる。新規則は旧規則における手続の枠組みを大きく変えるものではないが、2007年の会社法改正前に施行された旧規則に比して、現行会社法を踏まえた若干の条項の整理がなされているように見受けられる。

 

2. 会社法の定める手続

 会社法上は、合併の手続として主に以下のものが規定されている。なお、⑦以外はいずれも各当事会社それぞれにおいて行う必要がある。(本稿において述べる合併手続はいずれも吸収合併及び新設合併双方において実質的に共通であるが、便宜上、特に記載のある場合を除いて吸収合併の場合を念頭に置いた用語を用いて説明する。また、外国資本企業が当事者となる合併については、別途投資調整庁の手続にも服することになるが、この点は本稿では割愛する。)

  1. ① 取締役会における合併計画の作成
  2. ② コミサリス会による合併計画の承認
  3. ③ 従業員への通知
  4. ④ 合併計画の公告(債権者保護手続)
  5. ⑤ 株主総会による合併計画の承認
  6. ⑥ 合併証書の作成
  7. ⑦ 合併結果の公告(存続会社が行う。)

 

3. 新規則の定める手続

 上記会社法上の手続のうち、新規則が異なる内容を定めているものは、主に以下のとおりである。これらについては、上記のとおり会社法ではなく新規則の定める手続が適用されることになる。

(1) 合併計画の記載事項

 合併計画において記載すべき事項は会社法にも定められているが、新規則はより詳細な記載事項を定めている。具体的な記載事項は以下のとおりである。

  1. ① 当事会社の名称、所在地、事業内容、資本構成、株主、組織体制
  2. ② 存続会社の取締役会、コミサリス会の構成
  3. ③ 合併の理由及びスケジュール
  4. ④ 当事会社の株式の存続会社の株式への転換手続
  5. ⑤ 存続会社の定款変更案又は新設会社の設立証書案
  6. ⑥ 過去2年間(非公開会社が合併の当事者に含まれる場合、当該非公開会社については3年間)の監査済み財務諸表に基づく、当事会社の主要な財務データ
  7. ⑦ 直近半期分の財務データの、前年同期分との比較
  8. ⑧ 会計士によるレビュー済みの、存続会社のプロフォーマ(試算)財務データ
  9. ⑨ 当事会社の株式の価値、及び合併の公正性に関する、価値算定者によるレポートの概要
  10. ⑩ 専門家による価値算定の概要(必要な場合)
  11. ⑪ 合併の適法性に係るリーガルオピニオン
  12. ⑫ 従業員の地位、第三者の権利義務、及び一定の株主の有する権利に関し合併後必要となる手続
  13. ⑬ 合併により生じうる利益及びリスク、並びにこられをふまえた対応策及び事業計画

(2) 合併計画の公告

 会社法上、株主総会招集の30日前までに、合併計画の概要を新聞にて公告しなければならないとされているが、新規則はさらに、これをコミサリス会の承認を得てから2営業日以内に行うべき旨、及び全国紙の新聞に加えて当事会社のウェブサイトにも掲載すべき旨を定めている。また、公開会社の合併は、合併計画等について所要のOJKの承認(コミサリス会の承認を得てから2営業日以内に、合併計画等をOJKに提出しなければならないとされている。)及び株主総会の承認がなされて有効になるところ、当該公告において、かかるOJK及び株主総会の承認は未取得である旨を記載しなければならない。また、当該公告がなされたことを示す書面を、公告の日から2営業日以内にOJKに提出する必要がある。

(3) OJKへの提出書類

 新規則は、会社法上作成が要求されるものに加えて、さらに一定の書類を作成しこれをOJKに提出すべき旨を定めている。その一例として、当事会社の取締役会は、当該合併は、当事会社の利益、公共、及び公正な競争を勘案し、かつ株主及び従業員の有する権利を保証し、適正な考慮の下で行われるものである旨の陳述書をOJKに提出しなければならないとされている。

 

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