マレーシア新会社法の施行とポイント(下)
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 長谷川 良 和
前回、「SH1097 マレーシア:新会社法の施行とポイント(上) 長谷川良和(2017/04/05)」の中で、マレーシア新会社法の施行時期といくつかのポイントを紹介した。本稿は、その続編として、マレーシア新会社法に関する主要なポイントを追加で紹介する。
4. 非公開会社の株主書面決議の決議要件緩和
旧会社法の下では、非公開会社においては、株主による書面決議について全株主の署名が必要とされていた。これに対し、新会社法の下では、決議に必要な数の株式を保有する株主の署名をもって書面決議を有効に可決することが可能となっている。なお、決議要件を緩和することに伴い、一定の場合に議決権付株式の5%以上を保有する株主に株主総会招集請求権を付与する形で少数株主保護のためのセーフガードが設けられている。
5. 額面株式制度の廃止
新会社法の下では、額面株式制度が廃止され、その結果、新会社法施行前に発行済の株式も含めて無額面株式として扱われることになった。結果として、より柔軟な資本設計が可能になると見込まれている。
6. 取締役の義務違反に対する罰則強化
新会社法の下では、会社法規制の負担軽減等に向けた改正がなされる一方、自律的なコーポレートガバナンスの向上等を図るため取締役の会社法違反に対する罰則が強化されている。したがって、取締役は罰則対象に該当する事由が生じないよう、従前以上に留意して対応する必要があると言えよう。
7. 新たな類型の減資手続の導入
新会社法の下では、定款に別段の規定のない限り、減資実行直後に会社に支払不能事由がないこと等について全取締役が書面で意見を述べること(支払能力宣言書の作成)、株主総会の特別決議その他の法定要件を充足することにより、裁判所の確認を得ずに払込済株式資本の株主返還を伴う減資が可能となる。結果として旧会社法下におけるよりも機動的に当該減資を通じた払込済株式資本の株主への返還が可能になると期待されている。
8. 新たな類型の再建型会社倒産手続の導入
新会社法は、新たに更生管財人の選任を伴う会社更生手続(judicial management)及び会社任意和議手続(corporate voluntary arrangement)を導入した。これらの倒産手続の導入は、後日の施行が予定されているが、これらの新たな手続の導入により、新会社法の下では再建型会社倒産手続の選択肢がより多様化することになる。