◇SH1151◇実学・企業法務(第46回) 齋藤憲道(2017/05/11)

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実学・企業法務(第46回)

第2章 仕事の仕組みと法律業務

同志社大学法学部

企業法務教育スーパーバイザー

齋 藤 憲 道

 

3. 製造・調達

(2) 品質確保

 商品は、製造ラインの最終検査工程を通過した後で、取扱説明書等とともに段ボール箱等に梱包されて完成品倉庫に搬入される。

 その後は、ほとんど梱包を解かずに運送され、配送倉庫や商店の陳列棚等を経由して消費者の手に渡り、そこで初めて開梱される。

 製造現場の管理者や作業者が消費者を意識して製品の安全を厳しく管理している工場であれば、市場で製造物責任を問われる製品が出荷される可能性は少ない。

  1. (参考) さまざまな業界の品質管理の例
  2. ⑴ 耐久消費財の場合は、工場出荷時に良品であった商品が運送中に欠陥商品になることは少なく、製造ラインの最終工程が、実質的に製造物責任問題の発生を防ぐ最後の関門になる。
  3. ⑵ 普通の食品については、腐敗や変質のおそれが無い「消費期限」と、製造業者が指定する保存方法(冷蔵、冷凍等)に従えば品質が保持され風味も損われない「賞味期限」が表示される。これらの期限が経過すると、安全[1]・栄養・品質面の保証はない。食品の安全は、製造業者(農水産業者や工場の安全・衛生管理等)・小売を含む流通業者(トラックやスーパーの冷凍・冷蔵等)・消費者(家庭用冷蔵庫内の保存等)の3者がそれぞれ十分に管理することによって確保されるので、各関係者の管理事項を明確にして、食材の段階から飲食の段階まで一貫して安全確保できるようにすることが重要である。
  4. ⑶ 放送の場合は、「放送基準[2]」により使用可能な映像・用語等の限界が定められている。これを遵守するには、関係者の日常的な研修等が欠かせない。

a. 品質管理
① 製造・調達部門では、品質を確保するために、作業に関する基準・規定・作業指図書等を作成し、これを現場の作業員が遵守する。

  1. (注) 工場出荷前に発見した不良品・規格外品は、それを手直しするか廃棄等する。不良・規格外のままでは出荷しない。また、産地・製造年月日・消費期限等の虚偽表示をするのは厳禁である。

② 生産・出荷・返品・修理・廃棄に係る日々の作業記録を作成・保管[3]してトレーサビリティを確保する。

  1. (注) 作業記録の重要性
     市場・流通段階・製造工程で製品の不具合が発見されたときは、「作業記録」と「製品番号(製品に付された記号)」等を用いて不具合の原因がいつ・どの工程で生じたのかを迅速に解明し、不良品・規格外品が現存する場所・地域等を特定して、適切な改修・回収等の再発防止・被害拡大防止措置を行う。
     リコールするときに「作業記録」、「製品番号」等を用いて対象製品・市場を絞り込むことができなければ、過去に販売した全ての製品を回収することになる。
     「作業記録」のデータは、不良品・規格外品に係わった製造ライン・検査装置・冶具工具、製造時間帯、作業者、材料調達先、製品流通経路等を明らかにできるものが求められる。
     各種のISOマネジメント・システムでも、目的の実現に必要な文書管理・記録管理を求めている。

③ 製造工程で製品の安全性を確認できない事態が発生した場合は、直ちに製造ラインを止めて、検査と必要な是正措置を行う。製品の安全性に懸念があれば、製造部門は開発・設計部門等と協力して、製品設計・製造方法(加工、組立、計測等)・使用材料等を変更し、その効果を確認したうえで生産を再開する。

  1. (注) 品質マネジメント・システムの国際規格ISO9000[4]では、「顧客重視」を品質マネジメントの原則の要素の一つにしている。具体的にパフォーマンス評価する際には、顧客のニーズ及び期待が満たされている程度について、顧客がどう受け止めているかを監視することが求められる[5]

b. 内部告発(公益通報者保護制度)の活用
 商品の性能、食品の賞味期限・消費期限や原産地等の虚偽表示が、しばしば従業者の内部告発により発覚するが、企業の違法行為を内部告発した従業者は「公益通報者保護法」で保護される。
 企業としては、社員の内部告発をコンプライアンス確保の有効なツールとして積極的に活用したい。

  1. (注) 公益通報者保護法
     公益通報者保護法は、1. 「公益通報」を理由とする通報者の解雇他の不利益な取扱を禁止し、2. 国民の生命、身体、財産他の利益を保護する法令[6]の遵守を図る。3. 具体的には、次の3つの通報について通報者を保護する。
  2. ⑴ 事業者に対する通報(金品を要求・他人を貶める等、不正の目的ではない)
  3. ⑵ 行政機関に対する通報(真実だと信じる相当の理由がある)
  4. ⑶ 前記 ⑴ ⑵ に加え、次の①~⑤のいずれかに該当する事業者・行政機関以外の第三者への通報。
    ① 事業者内部や行政機関に通報すると不利益な取扱いを受ける恐れがある
    ② 事業者内部に通報すると証拠が隠滅される恐れがある
    ③ 事業者から事業者内部または行政機関に通報しないことを正当な理由なく要請された
    ④ 書面で事業者内部に通報後20日以内に調査開始通知がない(又は、正当理由なく調査しない)
    ⑤ 人の生命・身体への危害が発生する急迫した危険がある


[1] 行政による食の安全に関するリスク評価は、食品安全基本法に基づいて内閣府に設置された食品安全委員会が行なっている。

[2] 日本放送協会番組基準、日本民間放送連盟放送基準等

[3] このデータは原因分析に必要な要素を含み、迅速に分類・加工することが可能でなければならない。顧客相談窓口に寄せられた苦情等への対応とその記録を連接することが望まれる。

[4] ISO9000ファミリーは、9000(基本及び用語)、9001(要求事項)、9004(パフォーマンス改善)、9011(監査)等で構成される第三者認証制度である。単位業務をルール化して全体システムを構築し、文書化・実行・記録を重視する。なお、ISOを基にして、技術的内容および対応国際規格の内容を変更することなくJIS日本工業規格が作成されている。JISQ9001参照。

[5] ISO9001:2015「9.1.2 顧客満足」、JISQ9001:2015

[6] 「公益通報者保護法別表第八号の法律を定める政令」は、459本の法律を掲げている(2016年10月1日現在)。ただし、この中に法人税法・租税特別措置法・所得税法等の税法は含まれていない。

 

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