ミャンマー:新投資法の運用開始へ向けた重要な動き(下)
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 山 本 匡
1. ネガティブ・リスト
新投資法において、①連邦政府のみが行うことができる投資活動、②外国投資家が行うことができない投資活動、③ミャンマー国民が保有する企業又はミャンマー国民と合弁形態によってのみ行うことができる投資活動、及び④関連当局による承認を取得して行うことができる投資活動の4種類の規制業種が設けられることが規定されている。これらに関し、ミャンマー投資委員会(Myanmar Investment Commission)(MIC)は4月10日付通達(Notification No. 15/2017)(MIC2017年第15号通達)を公表し、上記①ないし④を定めた。①につき9業種、②につき12業種、③につき22業種、及び④につき126業種が定められている。MIC2017年第15号通達により、従来のネガティブ・リストを定めた通達(Notification No. 26/2016)は廃止された。
MICは、2017年2月に新投資法上のネガティブ・リストの草案を公表していた。
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SH1068 ミャンマー:新投資法におけるネガティブリストの公表とタックス・インセンティブ対象区域の分類 山本 匡(2017/03/17)
https://www.shojihomu-portal.jp/article?articleId=3217314
この草案により、従来、外国投資家が行うことができないとされていた取引業(小売業及び卸売業)について、小売業は合弁形態で、卸売業は基本的に規制なく行うことができるようになるのではないかという期待があった。
しかしながら、MIC2017年第15号通達では、小売業及び卸売業ともに、商業省(Ministry of Commerce)の承認を要することとされた。また、外国投資家(外資割合35%超の企業)は、上記床面積未満のミニ・マート及びコンビニエンス・ストア事業を行うことができないこととされた。
2. 投資奨励分野
新投資法上、法人所得税免除が認められるのは、MICが投資奨励分野として定める分野についてのみである。これに関し、MICは、4月1日に通達(Notification No. 13/2017)を公表し、20の投資奨励分野を定めた。これには、製造業、工業地域開発、新市街地開発、道路・橋梁・鉄道の建設、港湾建設、空港運営、運送業、発電・送電・配電、通信、教育、医療、情報技術、ホテル・観光及び研究開発等が含まれる。また、新投資規則において、ミャンマー国内での投資額や雇用創出等の法人所得税免除の基準が規定されている。
3. MICの承認を要する事業
新投資法において、①国家戦略にとって重要な投資活動、②大規模な資本集約的投資プロジェクト、③環境及び地域社会に重大な影響を与える可能性のあるプロジェクト、④国家保有の土地及び建物を使用する投資活動、並びに⑤政府が、MICへの提案の提出を必要と指定する投資活動について、MICの承認を要することとされている。
新投資規則において、上記各内容が定められた。例えば、国家戦略にとって重要な投資活動(上記①)として、情報、通信、医療、バイオその他の技術、輸送インフラ、エネルギーインフラ、都市開発等に関する投資で投資額が2,000万米ドルを超えると見込まれるもの等が挙げられている。また、大規模な資本集約的投資プロジェクト(上記②)の該当性は、投資見込額1億米ドルが基準とされる。