SH4534 タイ:不動産裏付型ICO制度の概要及び最近の事例(下) 今野庸介(2023/07/07)

取引法務資金決済法・デジタル資産

タイ:不動産裏付型ICO制度の概要及び最近の事例(下)

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 今 野 庸 介

 

(承前)

3 不動産裏付型ICOのみに適用される主な規制の概要

 上記に記載した規制はICO一般に関する規制の概要になるが、不動産裏付型ICOについては更に以下の規制が課される。

裏付不動産に係る要件

1.   裏付不動産の建設が完了しており、既に利用できる状態であること。

2.   裏付不動産は他の財産権や係争の対象でないこと。

投資額

1.   裏付不動産の投資額又は金額が、プロジェクト全体ベースでその総数及び価値の80%を下回っていないこと[1]

2.   裏付不動産の総額が5億バーツを下回っていないこと。

デューデリジェンス/鑑定

1.   裏付不動産のデューデリジェンスを実施し、届出書及び目論見書において、裏付不動産に関するリスクファクターを開示すること。

2.   SECが承認した不動産鑑定士による裏付不動産の鑑定が実施されること。

不動産の取得に係る契約

1.   不動産の取得に係る契約に、公正な価格での不動産の売却を妨げる可能性のある合意や義務が含まれていないこと。

信託の設定

1.   トークン保有者を受益者とする信託が設定されること[2]

2.   信託財産は、以下の(a)から(c)のいずれかとする。

(a)  裏付不動産の所有権

(b)  裏付不動産の借地権

(c)  裏付不動産の所有権等を保有する特別目的会社(Special Purpose Vehicle )(SPV)が発行する株式であって、かつ、当該SPVの全ての払込済資本及び議決権の75%以上を構成する分

3.   信託受託者は、規則で定める所定の役割と資格を有する者を選任する必要がある。

 

 なお、外資規制との関係では、ICOの要件としてデジタルトークンの外国人保有割合に制約が定められてはいないが、ICOのプロジェクトに係る裏付不動産に応じて、関連法令により外国人による当該投資対象不動産の保有に制約がある場合には、デジタルトークンにも当該制約が適用されると解され、デジタルトークンの外国人保有割合等がかかる制約に抵触しないことを確保する必要があると考えられる(例えば、裏付不動産がコンドミニアム1棟ではなく、その一部のユニットである場合、ICOを通じて本物件を所有している場合は、その所有者は外国人であるものと想定して、コンドミニアムの保有者に関する外国人の占有率を検討する等)。

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(こんの・ようすけ)

 2014年に長島・大野・常松法律事務所に入所。入所以降、ファイナンス案件を中心に国内外の企業法務全般に従事。2020年にミシガン大学ロースクール(LL.M.)修了。2022年8月よりバンコクオフィスに勤務。現在は、在タイ日系企業の一般企業法務等も含め、幅広く企業法務に関与している。

 

長島・大野・常松法律事務所 http://www.noandt.com/

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