◇SH1343◇フィリピン:対内投資に係る中銀登録制度 坂下 大(2017/08/10)

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フィリピン:対内投資に係る中銀登録制度

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 坂 下   大

 

 フィリピン投資における留意ポイントの1つとして、外国からの投資(対内投資)に係るフィリピン中央銀行(the Bangko Sentral ng Pilipinas:BSP)への登録というものがある。日系企業等の外国投資家によるフィリピン投資・進出に際しては、実務的な観点からかかるBSPへの登録を行っておくことが望ましい場合も多いことから、本稿ではその概要を紹介する。

 BSPへの登録の対象となる「対内投資」にはいくつかの類型が存在するが、日系企業によるフィリピン投資・進出形態の多く(例えばフィリピンでの子会社の設立や、既存フィリピン企業への出資)は、そのうちの、フィリピンの会社等に対する直接投資(対内直接投資)という類型に該当する(したがって、本稿では基本的にこの対内直接投資を念頭に説明している。)。

 BSPへの登録を行うことは外国投資家の義務ではないが、かかる登録を行うと、当該投資に係る配当や資金引上げ等に係る本国への送金の際に、フィリピン国内の銀行等(認可代理銀行(Authorized Agent Banks:AAB)又はその外国為替会社(AAB-forex corps))において、当該資金の全てを即時に外貨(例えば本国通貨)に転換して当該送金を行う権利が与えられる。例えば、日系企業がフィリピンに子会社を設立するケースでは、当該投資(日本からフィリピンへの資本金の送金)についてBSPへの登録を行っておくと、将来の配当や、清算時の残余財産の引上げに係る送金を、AAB等にて外貨(円)に転換したうえで行う途が確保されるということである。当該投資について将来の配当等や資金引上げ(清算等)の可能性がある場合には、BSPへの登録を行って、AAB等における外貨転換の途を確保しておくことは有益であると思われる。なお、BSPへの登録を行うためには、当該投資に係るフィリピンへの送金は、原則として外貨建てで行われる必要がある。あらかじめ本国で資金をペソに転換し、ペソ建てでフィリピンへ送金すると、BSPへの登録ができないので留意されたい。

 BSPへの登録手続は、金銭による対内直接投資の場合には比較的シンプルであり、以下の書類をBSPの国際業務部(International Operations Department)に提出することによって行う。

  1. ・ 申請書
  2. ・ 送金取扱銀行による被仕向送金証明書(Certificate of Inward Remittance:CIR)
  3. ・ 投資対象会社役員による、外国投資家による投資金額及び取得株式数に関する宣誓証明書
  4. ・ 投資対象会社の証券取引委員会(SEC)登録書類の写し

 BSPへの登録がなされると、BSPより登録証(Bangko Sentral Registration Document:BSRD)が発行される。前述のAAB等における外貨転換の際には、このBSRDを提出する必要がある。

 BSPへの登録は、投資を行ってから1年以内に行わなければならないが、対内直接投資については現在登録期間の猶予が設けられており、上記1年間の期間を徒過した投資であっても、2016年9月1日から2017年9月1日までの間に限り、引き続き登録が可能とされている。猶予期間の満了が迫っていることもあり、BSPへの登録を行っていない対内直接投資がある場合には、今一度、当該投資に係る将来の配当等や資金引上げの可能性を踏まえ、登録の要否を確認されたい。

 

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