◇SH1672◇日弁連、「サブリースを前提とするアパート等の建設勧誘の際の規制強化を求める意見書」をまとめる(2018/02/27)

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日弁連、「サブリースを前提とするアパート等の建設勧誘の際の規制強化を求める意見書」をまとめる

--建設業者・サブリース業者・金融機関の説明義務の強化等を要望--

 

 日本弁護士連合会は2月15日付で「サブリースを前提とするアパート等の建設勧誘の際の規制強化を求める意見書」を取りまとめ、2月19日付で国土交通大臣および内閣府特命担当大臣(金融)に提出した。

 近年、建設業者等が、貸家業の経験のない個人の土地所有者等にアパート等の建設を勧誘し、融資を受けさせ、所有する土地にアパート等の建設を行わせる営業が広く行われ、その際に「サブリース」を前提とした事業計画等で勧誘することも多いとみられている。

 「意見書」によると、「サブリース契約により、一定額の賃料収入を安定的に確保することができれば、土地所有者等(=建物所有者)は、貸家業の諸リスクを相当程度軽減することが可能となる面がある」が、「サブリース契約も賃貸借契約であり、基本的には借地借家法が適用されることから、……サブリース業者からのサブリース契約の解除や土地所有者等への賃料減額請求等が主張され得るなど、土地所有者等が貸家業の経営リスクを負担させられるリスクは、依然として相当程度存する」。また、「サブリース契約において、免責条項、家賃改定条項、中途解約条項等、サブリース業者に有利な条項(土地所有者等に不利な条項)が組み込まれていることも少なくない。こうした条項により、土地所有者等は、契約上不利な立場に立たされる」としている。

 そして、「当初の家賃額の保証は5年や10年に限定されていたり、サブリース業者の事業計画と異なり空室による賃料収入の減少が生じたり、建物の経年劣化による賃料の減額・修繕費用等の増大が生じたり、相続税対策も一面的なものであり債務増加やその相続の問題が生じていたりする等、勧誘内容と現実との齟齬により、多数の相談苦情が述べられるのみならず、複数の訴訟が提起されている状況も生じている」と指摘する。

 「意見書」では、現状の関連規制は、次のような問題があるとする。

  1.  •  建設業者への規制
  2.    建設業法では、建設工事請負契約の受注の際の情報提供に関する規律すら、整備されていないため、建設業者によるアパート等の建設勧誘には、何ら、規制はされていない状況にある(建物の建設工事請負契約については特定商取引法が適用される。また、契約が消費者契約と評価される場合は、消費者契約法が適用され得る)。
     
  3.  •  サブリース業者への規制
  4.    サブリース業者については、国土交通省の賃貸住宅管理業者登録制度があり、2016年9月1日施行の告示によって、賃貸住宅管理業務処理準則を改正し、サブリースの契約締結前に、貸主に説明すべき重要事項として、将来の借上げ家賃の変動に係る条件を明記することを定めたが、これは任意の登録制度にすぎず、賃貸住宅管理業者登録をしていないサブリース業者には適用されない。また、サブリースによる借上保証をうたい、地主にアパート建設を勧めるのはサブリース業者と同一ないし関連会社である建設業者であるが、かかる建設業者に対しては、上記準則は何らの法的拘束力を持たない。
     
  5.  •  金融機関への規制
  6.    アパート等の建設勧誘、とりわけサブリースを前提とした建設勧誘のほとんどの場合において、対象物件建設の際は、金融機関による融資がなされる。土地所有者等は、融資を受けてアパートを建設するリスクの説明を受けることがないまま、毎月の返済額以上の収益が得られ、なおかつ相続税対策にもなると信じて融資を受けてしまっている問題が指摘されている。社会的実態として、融資契約が事実上不可欠の要素であることに鑑みれば、金融機関にも、貸家業の事業リスク説明について、融資に当たって金利上昇や空室・賃料低下等のリスクを適切に理解するよう、適切な情報提供、ないし注意喚起が求められるというべきである。

 そして「意見書」は、次のような関連規制の強化を求めている。

  1. 1 国土交通省は、サブリース業者と同一ないし関連会社である建設業者がサブリースを前提とした賃貸住宅の建設を勧誘する場合、建設業者は、建設工事請負契約締結前に、注文主となろうとする者に対し、 ①借上げ家賃の変動リスク及び借上げ期間の限定ないし中途解約のリスク等に照らして、将来の家賃収入が保証されているものではないこと、②金融機関からの融資完済までの賃貸住宅の維持修繕内容、これにかかる費用、及び請負代金額を含めた投下資本回収のために必要な月額賃料額、③相続税対策として検討する際には、相続税の軽減とともに事業収支の成否を併せて検討する必要があることを説明すべきことを、法令上の義務とすべきである。
  2. 2 賃貸住宅管理業者登録制度を義務的登録制度とする法整備(又は少なくともサブリース業者について義務的登録制度とする法整備)を行うとともに、サブリース業者である登録業者に対しては、上記1と同様の説明義務を課すべきである。
  3. 3 金融庁は、銀行法施行規則において、金融機関が、賃貸住宅のローンの融資に際し将来的な賃貸物件の需要見込み、金利上昇や空室・賃料低下リスク等を説明すべきことを明記すべきである。

 

  1. 日弁連、サブリースを前提とするアパート等の建設勧誘の際の規制強化を求める意見書(2月15日)
    https://www.nichibenren.or.jp/activity/document/opinion/year/2018/180215_3.html
  2.  
  3. ○ 意見書全文
    https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/2018/opinion_180215_3.pdf

 

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