欧州データ保護会議、ChatGPTに関するタスクフォースを設置
アンダーソン・毛利・友常法律事務所[*]
弁護士 後 藤 未 来
弁護士 高 羽 芳 彰
1 はじめに
OpenAI社により開発されたChatGPT等の生成型AIが世界的な注目を集める中、欧州データ保護委員会は4月13日、これに関するタスクフォースの設置を発表した[1]。設置目的について、同委員会は「各国のデータ保護当局が実施する可能性のある執行に関する情報を交換し、協力を促進するため」としている。
ChatGPTにおける個人データの利用をめぐっては、EU加盟国の1つであるイタリアのデータ保護当局が3月31日、ChatGPTの使用を一時禁止し[2]、注目を集めた。ロイターによれば、ドイツ、フランス、アイルランドのデータ保護当局がイタリアのデータ保護当局と連絡を取っており、アイルランドのデータ保護機関の報道官は「この件に関し、欧州連合(EU)域内のすべてのデータ保護関連当局と調整する予定」と述べたとされる[3]。このように欧州各国がChatGPTの個人データの利用に対する規制の検討に乗り出し、連携を進める中、欧州データ保護委員会によるタスクフォース設置の発表となった。
以下では、ChatGPTと欧州GDPR(General Data Protection Regulation:一般データ保護規則)との関係にかかわる課題に関して、イタリアのデータ保護当局(以下、「伊当局」という。)が公表する内容を参考に概観する。
2 ChatGPTとGDPR
OpenAI社は、同社が公表する「AIの安全性に対するアプローチ」において「学習データの中には、インターネット上で公開されている個人データも含まれている」としており、EEA域内のデータ主体の個人データの取扱いに関しては、GDPRの規制との関係が問題となり得る。
伊当局は、上述のとおり3月31日にChatGPTの使用の一時禁止を発表したが、4月12日には禁止解除に向けた必要な措置を提示[4]し、同月28日にはOpen AI社が実施した措置を受けて使用禁止の解除を表明[5]した。
伊当局は、ChatGPTの使用の一時禁止を発表した際、ChatGPTにおける個人データの利用に関し、①個人データ処理の法的根拠、②本人等への情報提供、③個人データの正確性、④児童の保護などに関する問題提起を行った。以下これらを概観する。
① 個人データ処理の法的根拠
ChatGPT等の生成型AIにおいては学習データ等としての個人データの利用が想定されるところ、GDPRには、個人データを処理するための法的根拠として下表の6つが定められている。
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(ごとう・みき)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー、弁護士・ニューヨーク州弁護士。理学・工学のバックグラウンドを有し、知的財産や各種テクノロジー(IT、データ、エレクトロニクス、ヘルスケア等)、ゲーム等のエンタテインメントに関わる案件を幅広く取り扱っている。ALB Asia Super 50 TMT Lawyers(2021、2022)、Chambers Global(IP分野)ほか選出多数。AIPPIトレードシークレット常設委員会副議長、日本ライセンス協会理事。
(たかば・よしあき)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2015年慶應義塾大学理工学部卒業。2017年慶應義塾大学大学院理工学研究科修士課程修了。2022年弁護士登録(第一東京弁護士会)。
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/
<事務所概要>
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国に拠点を有する。
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