経済産業省(中小企業庁)、中小企業のPMIを促進する、
実践ツール・活用ガイドブック・事例集を公表
アンダーソン・毛利・友常法律事務所*
弁護士 佐 橋 雄 介
弁護士 高 野 聖 也
1 はじめに
M&A(会社法の定める組織再編に加え、株式譲渡や事業譲渡を含む、各種手法による事業の引継ぎ)は、後継者不在の中小企業の事業承継の手法のみならず、譲渡側・譲受側双方にとっての企業の成長戦略のひとつとして、様々な目的の達成や問題の解決を目指して行われる。これらを実現するためには、M&A後の事業や経営の統合作業(PMI:Post Merger Integration)を適切に行うことが重要である。
近年、中小企業のM&Aが増加傾向にあるなか、経済産業省(中小企業庁)は、2022年3月に「中小PMIガイドライン」[1]によって中小企業のPMIの「型」を提示し、2023年3月には中小PMIガイドラインの解説動画[2]を公表するなど、中小PMIガイドラインの周知・普及に努めてきた。しかしながら、未だ中小企業および支援機関におけるPMIの理解・取組は十分な状況といえないことから、経済産業省(中小企業庁)は、実証事業[3] [4]において、支援機関の支援を受けながらPMIに取り組んだ譲受企業の成果・取組を「PMI実践ツール」、「PMI実践ツール活用ガイドブック」および「PMI取組事例集」として取りまとめ、2024年3月29日に公表した[5]。これらは、PMIを見据えたM&A成立前からの検討および効率的かつ円滑なPMIを行うために効果的なツールであると思われることから、本稿では、これらのツールおよびガイドブックの概要ならびにPMI取組事例集に記載された取組事例を紹介する。
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(さはし・ゆうすけ)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー。2006年東京大学法学部卒業。2008年弁護士登録。2015年University of Southern California(LLM)修了。2015-2016年フランスのMcDermott Will & Emery法律事務所勤務。2016年ニューヨーク州弁護士登録。日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)。主に国内外の企業買収、組織再編、ジョイントベンチャー等のM&A案件や一般企業法務、商取引等のコーポレート案件を取り扱っている。
(たかの・せいや)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2020年慶應義塾大学法学部卒業。2022年東京大学法科大学院卒業。2023年弁護士登録(第一東京弁護士会)。
<事務所概要>
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国に拠点を有する。
<連絡先>
〒100-8136 東京都千代田区大手町1-1-1 大手町パークビルディング
* 「アンダーソン・毛利・友常法律事務所」は、アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業および弁護士法人アンダーソン・毛利・友常法律事務所を含むグループの総称として使用