SH4494 国税庁、「ストックオプションに対する課税(Q&A)」を公表 齋藤宏一/早瀨孝広/香川遼太郎(2023/06/15)

組織法務監査・会計・税務

国税庁、「ストックオプションに対する課税(Q&A)」を公表

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業

弁護士 齋 藤 宏 一

弁護士 早 瀨 孝 広

弁護士 香 川 遼太郎

 

1 はじめに

 国税庁は、2023年5月30日、ストックオプション(「SO」)について、「ストックオプションに対する課税(Q&A)」を公表した[1]。令和5年度の税制改正において、税制適格ストックオプション(「税制適格SO」)の要件緩和に関する改正が行われたこと(下記2⑹参照)を踏まえたものであるが、税制適格SOに該当しないSO(「税制非適格SO」)のうち、信託を利用した仕組みを用いるもの(「税制非適格SO(信託型)」)の課税関係について、国税庁としての立場を明らかにした点などに実務上重要な意義を有する。

 以下では、税制非適格SO(信託型)にかかるQ&Aを中心に概観する。なお、個々の事実関係によっては、ことなる取扱いとなる場合がある点には注意を要する。

 

2 国税庁Q&Aの内容

 ⑴ 税制非適格SO(無償・有利発行型)(問1)

 本Q&Aは、勤務先から譲渡制限の付された税制非適格SOを無償で取得した場合の課税関係について、①付与時には譲渡制限が付されているために譲渡による所得の実現ができず、課税関係は生じないこと、②行使時の経済的利益は給与所得になること、および③行使によって取得した株式を売却した場合には株式譲渡益課税の対象となることを明らかにしている。

 

 ⑵ 税制非適格SO(有償型)(問2)

 本Q&Aは、勤務先からSOを適正な時価で有償取得した場合の課税関係について、①付与時には当該SOを適正な価格で購入していることから経済的利益が発生せず、課税関係が生じないこと、②行使時の経済的利益は認識しないこと(所得税法36条2項、所得税法施行令109条1項1号)、および③行使によって取得した株式を売却すると株式譲渡益課税の対象となることを明らかにしている。

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(さいとう・こういち)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業パートナー。1999年東京大学法学部卒業。2001年弁護士登録(第一東京)。2008年ハーバード・ロースクール(LLM)修了、2008-2009年ハーバード・ロースクール客員研究員。2009年ニューヨーク州弁護士登録。コーポレートガバナンス、株主総会やインセンティブ(株式)報酬制度(特にグローバルベースのもの)の設計・導入・運用に関連する数多くの企業からの相談に対応している。

 

(はやせ・たかひろ)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業パートナー。2009年早稲田大学大学院法務研究科修了。2010年弁護士登録(第二東京)。2017年ハーバード・ロースクール(LLM)修了、2017-2018年米国Pillsbury Winthrop Shaw Pittman法律事務所(ロサンゼルス)勤務。2018年ニューヨーク州弁護士登録。国内及びグローバルのインセンティブ報酬の導入・運用等を含むコーポレート案件を中心に取り扱う。

 

(かがわ・りょうたろう)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業アソシエイト。早稲田大学法学部卒業。2022年弁護士登録(東京弁護士会)。

 

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/

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