ベトナム:労働法Q&A 障害者を使用する場合の留意点
弁護士 澤 山 啓 伍
ベトナム弁護士 Tran Thi Viet Nga
Q: 当社は聴覚障害のある者を数名雇用しようとしています。軽度の障害で、さほど仕事に影響を与えないため、一般労働者と同様な取扱をする予定ですが、雇用に関して特別な条件(賃金の支払い、残業時間など)や配慮が必要な留意点はあるでしょうか。
A:
ベトナム法上、「障害者」は、身体の一つまたは複数の部分に、労働、生活、及び学習に困難をもたらす欠陥があるか、障害の形で表れる機能障害がある者と定義されています(障害者法2条1項)。ベトナム統計総局によれば、2016年時点で、15歳以上の障害者の雇用率は31.7%とされていますが、このうち民間企業に雇用されている障害者の数は不明です。なお、日本では、2021年6月1日時点で、民間企業に雇用されている障害者の数は59.8万人となっており、その数は18年連続で過去最高を更新しています。
ベトナムにおいては、障害者法という法律で、障害者の権利義務及び国家、家族、社会の障害者への責任について規定しています。このほか、労働法、労働安全衛生法においても、労働関係に関して障害者を雇用する使用者に適用される特別な規定があります。
障害者雇用に取り組む場合、留意すべき点として、法律上規定されている内容、及びそれに違反した場合の行政罰について以下の表のとおりまとめました。
この記事はプレミアム向け有料記事です
ログインしてご覧ください
(さわやま・けいご)
2004年 東京大学法学部卒業。 2005年 弁護士登録(第一東京弁護士会)。 2011年 Harvard Law School卒業(LL.M.)。 2011年~2014年3月 アレンズ法律事務所ハノイオフィスに出向。 2014年5月~2015年3月 長島・大野・常松法律事務所 シンガポール・オフィス勤務 2015年4月~ 長島・大野・常松法律事務所ハノイ・オフィス代表。
現在はベトナム・ハノイを拠点とし、ベトナム・フィリピンを中心とする東南アジア各国への日系企業の事業進出や現地企業の買収、既進出企業の現地でのオペレーションに伴う法務アドバイスを行っている。
(Tran Thi Viet Nga)
2016年Hanoi Law University及び名古屋大学日本法教育研究センター(ハノイ)卒業後、長島・大野・常松法律事務所ハノイオフィスに入所。2020年ベトナム弁護士資格を取得。日系企業の事業進出に伴う手続きや法務、現地企業の売買、既進出企業の現地でのオペレーションに伴う法務(事業拡大のための法令調査、紛争、労務、取引契約レビュー等)を担当。
長島・大野・常松法律事務所 http://www.noandt.com/
長島・大野・常松法律事務所は、約500名の弁護士が所属する日本有数の総合法律事務所です。企業法務におけるあらゆる分野のリーガルサービスをワンストップで提供し、国内案件及び国際案件の双方に豊富な経験と実績を有しています。
当事務所は、東京、ニューヨーク、シンガポール、バンコク、ホーチミン、ハノイ、ジャカルタ及び上海に拠点を構えています。また、東京オフィス内には、日本企業によるアジア地域への進出や業務展開を支援する「アジアプラクティスグループ(APG)」及び「中国プラクティスグループ(CPG)」が組織されています。当事務所は、国内外の拠点で執務する弁護士が緊密な連携を図り、更に現地の有力な法律事務所との提携及び協力関係も活かして、特定の国・地域に限定されない総合的なリーガルサービスを提供しています。
詳しくは、こちらをご覧ください。