SH4496 公正取引委員会による独占禁止法上の「優越的地位の濫用」に係るコスト上昇分の価格転嫁円滑化の取組に関する特別調査 石田健/二村尚加(2023/06/16)

取引法務競争法(独禁法)・下請法

公正取引委員会による独占禁止法上の「優越的地位の濫用」に係る
コスト上昇分の価格転嫁円滑化の取組に関する特別調査

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業

弁護士 石 田   健

弁護士 二 村 尚 加

 

1 はじめに

 公正取引委員会(以下「公取委」という。)は、2022年12月27日に公表した「独占禁止法上の『優越的地位の濫用』に関する緊急調査の結果」[1]等において転嫁円滑化に向けた調査等を継続するとしていたところ、2023年5月30日、独占禁止法上の「優越的地位の濫用」に関して、2023年度における、労務費、原材料価格、エネルギーコスト等のコストの上昇分の価格転嫁が適切に行われているかなどの状況を把握するためのさらなる調査として特別調査を実施することとし、同日、11万名を超える事業者に対して調査票を発送したと公表した。[2]

 今回の特別調査においては、コスト構造において労務費の占める割合が高い業種に対して重点的に調査票を発送するとともに、2022年の緊急調査において注意喚起文書を送付した事業者へ調査票を発送し、その後の取組状況を確認することとしている。

 また、調査票が届いていない事業者であっても調査に参加することができるよう、公取委のウェブサイト上に特設ページを開設している。[3]

 

2 今回行われる調査について

 前回の調査においては、独占禁止法違反事件の審査ではなく、事業者間取引における下記の①または②に該当する行為が疑われる事案に関する実態を把握するため、独占禁止法上の「優越的地位の濫用」に関する緊急調査として、受注者および発注者に対しての書面調査や特に詳細な調査を行う必要があると認められた発注者については、立入調査、報告命令等による個別調査を行った。

 「令和5年度独占禁止法上の『優越的地位の濫用』に係るコスト上昇分の価格転嫁円滑化の取組に関する特別調査・質問票」[4](以下「本特別調査・質問票」という。)によれば、今回の調査は、価格転嫁に関する下記の①または②に該当する行為に関し、調査対象期間(2022年6月1日から2023年5月31日までの間)における、価格転嫁の状況等について、受注者ならびに発注者の双方の立場から確認するために行うものである。

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(いしだ・たけし)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業パートナー。2007年弁護士登録(第二東京弁護士会)。2015年から3年間にわたり任期付職員として公正取引委員会審査局第四審査において審査専門官(主査)を務める。公取委において違反事件の審査・審判・訴訟を担当した経験を活かし、現在は独禁法(下請法・景表法含む)に関する幅広い案件を扱っている。

(にむら・なおか)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業アソシエイト。2020年中央大学法学部卒業。2022年弁護士登録(第二東京弁護士会)。

 

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/

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