「女性活躍・男女共同参画の重点方針2023(女性版骨太の方針2023)」が決定・公表
――女性登用加速化で東証プライムに数値による努力目標、女性活躍等取組みの地方・中小企業には採択審査加点の補助金拡充へ――
すべての女性が輝く社会づくり本部(本部長・首相)および男女共同参画推進本部(本部長・首相)は6月13日、同日開催した合同会議において「女性活躍・男女共同参画の重点方針2023(女性版骨太の方針2023)」を決定した。
政府は男女共同参画社会基本法(平成11年法律第78号)に基づく「第5次男女共同参画基本計画~すべての女性が輝く令和の社会へ~」(令和2年12月25日閣議決定)により2025年度末までを見通した施策の基本的方向性と具体的な取組みを掲げている。「第1部 基本的な方針」の冒頭「はじめに」では、政府として「社会のあらゆる分野において、2020年までに、指導的地位に女性が占める割合が、少なくとも30%程度となるよう期待する」との目標(編注・いわゆる「2020年30%」目標)を掲げたのは2003年のことであったものの、現時点において全体として当該水準に到達しそうとはいえない状況にある旨を述べた。一方、いわゆる女性活躍推進法(平成27年法律第64号)などに基づく積極的改善措置(ポジティブ・アクション)の実行、働き方改革の推進などを通じては「女性就業者数や上場企業の女性役員数が増加し、民間企業の各役職段階に占める女性の割合が着実に上昇しているなど、4次計画の下で、『30%』に向けた道筋をつけてきており、指導的地位に就く女性が増える土壌が形成されてきている」とする現状分析を示したところである。
「女性活躍・男女共同参画の重点方針」は、上記・5次計画における取組みのさらなる具体化を図るとともに政府全体として新たに重点的に取り組むべき事項を定めるもので、例年6月を目途として決定し、各府省の概算要求に反映することとしている。なお、すべての女性が輝く社会づくり本部が決定していた「女性活躍加速のための重点方針2020」(令和2年7月1日決定)の名称が変更されたのは「女性活躍・男女共同参画の重点方針2021」(令和3年6月16日決定)からとなっており、本「重点方針2021」より男女共同参画推進本部と共同決定されるようになったものである。また、本「重点方針」に「女性版骨太の方針」という名称が添えられるようになったのは「女性活躍・男女共同参画の重点方針2022(女性版骨太の方針2022)」(令和4年6月3日決定)以降のこととなる。
この記事はプレミアム向け有料記事です
ログインしてご覧ください
今般決定された重点方針(以下「女性版骨太の方針2023」という)は、従来よりも踏み込んだ施策を講じることが不可欠であるとの認識のもと、いわば「シンボリックな取組を通じて社会全体における女性活躍の機運を醸成すべく、女性役員比率の更なる向上や、女性の育成・登用を着実に進め、管理職、更には役員へという女性登用のパイプラインの構築を強力に進めることで、企業における女性登用を加速化する」こととされた(「女性版骨太の方針2023」1頁参照)。具体的施策の筆頭には、かかる「女性登用加速化」を主軸とする「I 女性活躍と経済成長の好循環の実現に向けて」を掲げ、続いて「II 女性の所得向上・経済的自立に向けた取組の強化」「III 女性が尊厳と誇りを持って生きられる社会の実現」などを取り上げる構成とされている。
「I 女性活躍と経済成長の好循環の実現に向けて」においては、(1)企業における女性登用の加速化、(2)女性起業家の育成・支援、(3)地方・中小企業における女性活躍の促進の3点を掲出。上記(1)には「①プライム市場上場企業を対象とした女性役員比率に係る数値目標の設定等」「②パイプラインの構築に向けた取組の支援」「③アセットオーナー等機関投資家によるスチュワードシップ活動の実質化」「④5次計画における役員に占める女性割合に関する成果目標の策定」を取り込んだ(①・③について4月26日付スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議「コーポレートガバナンス改革の実質化に向けたアクション・プログラム」参照)。
上記①の数値目標を巡っては「グローバルな投資家との対話を念頭により高い水準のガバナンスが期待されるプライム市場でさえ女性役員がいない企業が約2割に上る」とする現状認識を踏まえ、また、構ずべき具体策による達成目標として「企業における女性役員比率に係る数値目標」が設定されるに至ったものとなる。「重要かつ象徴的な第一歩として」プライム市場上場企業につき当該数値目標を設定することとし、2023年中に取引所の規則に次の2点の内容の規定を設ける方針である。(i)2025年を目途に、女性役員を1名以上選任するよう努める、(ii)2030年までに、女性役員の比率を30%以上とすることを目指す(「女性版骨太の方針2023」2頁参照)。2020年閣議決定の5次計画においては「東証一部上場企業役員に占める女性の割合」を「2022年までに12%」とする数値目標(成果目標)が示されていた(編注・注記として「役員には、取締役、監査役、執行役に加えて、執行役員又はそれに準じる役職者も含む」旨、また当該目標について「5次計画の中間年フォローアップの際に、市場再編後の目標を設定予定」とする記載がある(「5次計画」21頁参照)。いわゆる「2030年30%」目標に関しては2020年11月17日付日本経済団体連合会「。新成長戦略」などについても参照)。
地方・中小企業に係る上記(3)の取組みは「①中小企業向け補助金における優遇による両立支援に向けた取組」「②中小企業を含む企業経営者等のアンコンシャス・バイアスの解消・行動変容を促すコンテンツの開発・普及」「③地域金融機関を通じた女性経営人材のマッチング支援の促進」「④女性活躍に取り組む中小企業の好事例の横展開等」からなる。①は事業再構築補助金・IT導入補助金・ものづくり補助金などの採択審査において女性活躍や子育て支援に取り組む企業を加点するといった優遇措置を他の補助金にも広げていくという措置である(「女性版骨太の方針2023」4〜5頁参照)。
日本労働組合総連合会(連合)では「女性版骨太の方針2023」の決定・発表を受け、女性役員の登用の加速化を巡っては「ポジティブ・アクションの推進とともに固定的性別役割分担意識の払拭や男性中心型労働慣行の是正が不可欠である」とコメントしている(6月13日付事務局長談話「『女性活躍・男女共同参画の重点方針2023』に対する談話」参照)。
内閣府、「女性版骨太の方針(女性活躍・男女共同参画の重点方針)2023」を公表
https://www.gender.go.jp/policy/sokushin/sokushin.html
連合、「女性活躍・男女共同参画の重点方針2023」に対する談話
https://www.jtuc-rengo.or.jp/news/article_detail.php?id=1248