公取委、「令和4年度における独占禁止法違反事件の
処理状況について」を公表
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業
弁護士 臼 杵 善 治
弁護士 北 田 拓 生
1 はじめに
令和5年6月1日、公正取引委員会(以下「公取委」という。)より、「令和4年度における独占禁止法違反事件の処理状況について」が公表された[1]。令和4年度は、法的措置等の件数が大幅に増加した上、課徴金総額が過去最高となる1019億円8909万円へと大幅に増加している。電力会社やイベント分野における入札談合等の事案および課徴金減算制度を利用した事案が初めて公表された点が特徴的である。以下、公表された公取委の独占禁止法違反事件の処理状況についてコメントすることとしたい。
2 排除措置命令等の傾向
令和4年度は、価格カルテル1件、その他のカルテル(注1)3件、入札談合4件、受注調整0件、私的独占0件の合計8件の排除措置命令と、不公正な取引方法に関する3件の確約計画の認定(注2参照)、合計11件の法的措置(注3参照)が行われ、令和3年度の合計5件よりも大幅に増加する結果となった。
出典:「令和4年度における独占禁止法違反事件の処理状況について」(公取委) 2頁
(注1)その他のカルテルとは、数量、販路、顧客移動禁止、設備制限等のカルテルである。
(注2)確約計画の認定は、確約手続にかかる通知を受けた事業者から申請された確約計画を公正取引委員会が認定するという、独占禁止法に基づく行政処分である。公正取引委員会は、認定した確約計画に従って確約計画が実施されていないなどの場合には、当該認定を取り消し、確約手続にかかる通知を行う前の調査を再開することとなる。
(注3)法的措置とは、排除措置命令、課徴金納付命令および確約計画の認定のことである。一つの事件について、排除措置命令と課徴金納付命令が共に行われている場合には、法的措置件数を1件としている。
(注4)私的独占と不公正な取引方法のいずれも関係法条となっている事件は、私的独占に分類している。
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(うすき・よしはる)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業パートナー。2003年慶應義塾大学法学部卒業。2006年慶應義塾大学法科大学院卒業。2008年弁護士登録(第一東京)。2015年University of London, LL.M. in Competition Law修了。公正取引委員会による審査手続対応、海外当局による調査手続対応、国内外の競争法当局に対する企業結合届出のサポート、競争法コンプライアンスマニュアル作成・競争法コンプライアンストレーニング、流通取引規制に関するアドバイス、景品表示法対応等の多数の案件を取り扱っている。
(きただ・ひろき)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業アソシエイト。2021年大阪大学法学部卒業。2022年弁護士登録(第一東京弁護士会)。
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/
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