SH4557 総務省、不正アクセスによる通信の秘密の漏えい事案に関し、行政指導を実施 井上乾介/佐々木公樹(2023/07/21)

取引法務営業秘密・機密情報管理

総務省、不正アクセスによる通信の秘密の漏えい事案に関し、
行政指導を実施

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業

弁護士・カリフォルニア州弁護士 井 上 乾 介

弁護士 佐々木 公 樹

 

1 はじめに

  情報通信技術が発達し、新型コロナウイルスの流行により急速にデジタル化が進んだ今日の社会においては、サイバー攻撃等による個人情報や機密情報等の外部への流出といったセキュリティリスクへの対応がますます重要となっている。

 また、企業等に対するサイバー攻撃は年々巧妙化しており、調査によれば、2022年における上場企業の個人情報の漏えい・紛失事故の件数は165件で、過去11年間で最多となっている[1]

 このような状況の中、2022年に、富士通株式会社(以下「富士通」という。)が同社の提供する企業向けネットワークサービス「FENICS」において外部から不正アクセスを受ける事案(以下「本事案」という。)が発生した。これを受けて総務省は、2023年6月30日に、富士通およびその子会社の富士通クラウドテクノロジーズに対して、電気通信事業法で電気通信事業者に求められる「通信の秘密」が守られていないとして行政指導を実施した。サイバー攻撃による通信の秘密の漏えいについて、被害を受けた企業側が行政指導を受けるのは今回が初めてとされている[2]

 本稿では、電気通信事業法(以下「法」という。)において「通信の秘密」の保護がどのように図られているのかについて概説した上で、本事案の概要および総務省の指導の内容について紹介する。

 

2 電気通信事業法における通信の秘密の保護

  本項目では、電気通信事業法上の通信の秘密の保護に関する諸規定について概説する。

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(いのうえ・けんすけ)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 スペシャル・カウンセル。2004年一橋大学法学部卒業。2007年慶応義塾大学法科大学院卒業。2008年弁護士登録(東京弁護士会)。2016年カリフォルニア大学バークレー校・ロースクール(LLM)修了。2017年カリフォルニア州弁護士登録。著作権法をはじめとする知的財産法、個人情報保護法をはじめとする各国データ保護法を専門とする。

 

(ささき・こうき)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業アソシエイト。2021年早稲田大学法学部卒業。2022年弁護士登録(第二東京弁護士会)。

 

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/

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