SH4806 経済安全保障分野におけるセキュリティ・クリアランス制度等に関する有識者会議による最終とりまとめの公表 中崎尚/藤田将貴/松本拓/石川雅人(2024/02/09)

組織法務経済安保・通商政策

経済安全保障分野におけるセキュリティ・クリアランス制度等に関する有識者会議による最終とりまとめの公表

アンダーソン・毛利・友常法律事務所*

弁護士 中 崎   尚

弁護士 藤 田 将 貴

弁護士 松 本   拓

弁護士 石 川 雅 人

 

1 はじめに

 2024年1月19日、2023年2月に設置された経済安全保障分野におけるセキュリティ・クリアランス制度等に関する有識者会議(以下「有識者会議」という。)は、10回にわたる有識者会議の委員の検討の最終的な結果を「最終とりまとめ」として公表した[1]

 岸田内閣総理大臣は、最終とりまとめが示した方向性を踏まえ、政府が保有する経済安全保障上重要な情報のうちコンフィデンシャル級の情報を保護の対象とする制度を創設する新法案の2024年通常国会への提出に向け、準備を加速化するよう指示した[2]

 以下では、最終とりまとめの内容とそのポイントについて説明する。

 

2 セキュリティ・クリアランス制度とは

 一般に、セキュリティ・クリアランス制度とは、国家における情報保全措置の一環として、政府が保有する安全保障上重要な情報として指定された情報(Classified Information、以下「CI」という。)にアクセスする必要がある者に対して政府による調査を実施し、当該者の信頼性を確認した上でアクセスを認める制度である。

 

3 新制度の基本的な骨格

 新制度においては、既存のCI保全制度である特定秘密保護法[3]を踏まえ、

  1. ① 政府として秘匿すべき機密情報の指定・解除のルール
  2. ② 当該情報に対する厳格な管理・提供のルール(情報へのアクセスの条件としての個人や事業者に対するセキュリティ・クリアランスの仕組みを含む。)
  3. ③ 漏えいや不正取得に対する罰則を定めるべきであるとされた。

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(なかざき・たかし)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所スペシャルカウンセル。東京大学法学部卒、2001年弁護士登録(54期)、2008年米国Columbia University School of Law (LL.M.)修了、2009年夏まで米国ワシントンD.C.のArnold & Porter法律事務所に勤務。復帰後は、インターネット・IT・システム関連を中心に、知的財産権法、クロスボーダー取引を幅広く取扱う。日本国際知的財産保護協会編集委員、経産省おもてなしプラットフォーム研究会委員、経産省AI社会実装アーキテクチャー検討会作業部会構成員、経産省IoTデータ流通促進研究会委員、経産省AI・データの利用に関する契約ガイドライン検討会委員、International Association of Privacy Professionals (IAPP) Co-Chairを歴任。2022年より内閣府メタバース官民連携会議委員。

 

(ふじた・まさき)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー。2003年早稲田大学法学部卒業。2006年京都大学法科大学院修了。2007年弁護士登録(東京弁護士会)。2016年University of California, Berkeley(LLM)修了。2017年ニューヨーク州弁護士登録。大手総合商社法務部への出向経験を有する。経済安全保障・通商(米国・英国・EUの経済制裁及び貿易管理を含む)、M&A、事業再生分野を中心に取り扱う。主な著書・論文:『英文M&Aドラフティングの基礎』(共著)(金融財政事情研究会、2023)、「新たなセキュリティ・クリアランス制度の法制化に向けた議論の方向性」(商事法務ポータル、2023)、「グローバル法務 日本企業が留意すべき個人情報保護、ビジネスと人権、経済安全保障に関する各国の法規制や動向」(共著)会社法務A2Z 2024年2月号、「米国の経済制裁の基礎知識と実務対応のポイント」(Business Lawyers(ウェブサイト)、2022)、「米国による懸念国向け半導体関連輸出規制の強化」(商事法務ポータル、2023)、「米財務省 CFIUS2022年次報告書を公表」(商事法務ポータル、2023)ほか多数。

 

(まつもと・たく)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー(弁護士・ニューヨーク州弁護士)。主要な業務分野は,①M&A・投資,②経済安全保障・通商,③アウトバウンド・インバウンド,④スタートアップ法務・投資,⑤ウェルス・マネジメント及び⑥競争法関連。2012年インドネシアのSSEK法律事務所勤務,2016年コロンビア大学・ロースクール(LLM)修了,2016年~2017年米国のSeward & Kissel法律事務所勤務。https://www.amt-law.com/professionals/profile/TUM

 

(いしかわ・まさと)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2010年東京大学法学部卒業。2010年警察庁入庁(~2021年)。2017年京都府警察本部警備部外事課長。2022年弁護士登録(第一東京弁護士会)。危機管理・不正調査、経済安全保障等を取り扱う。主な著書・論文:「新たなセキュリティ・クリアランス制度の法制化に向けた議論の方向性」(商事法務ポータル、2023)、「経済安全保障分野におけるセキュリティ・クリアランス制度等に関する有識者会議による中間論点整理の公表」(商事法務ポータル、2023)。

 

<事務所概要>
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国に拠点を有する。

<連絡先>
〒100-8136 東京都千代田区大手町1-1-1 大手町パークビルディング


* 「アンダーソン・毛利・友常法律事務所」は、アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業および弁護士法人アンダーソン・毛利・友常法律事務所を含むグループの総称として使用

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