第3回G7データ保護・プライバシー機関ラウンドテーブル会合の開催(生成AIに関する声明の採択等)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所*
弁護士 後 藤 未 来
弁護士 德 永 大 誠
1 はじめに
経済・社会活動のグローバル化および生成AIを始めとする情報技術の急速な発展とともに、データの国境を越えた移転が増加し、大量の個人情報の自動収集・処理も行われるようになった。こうした変化は、社会生活の利便性向上に資する半面で、適切な利用や規制がなされなければ、プライバシーそのほかの基本的人権に対して回復不可能な損害を生じさせる可能性があり、高水準のデータ保護およびプライバシーの確保は、国際的に緊急の課題となっている。
このような中、個人情報保護委員会は、2023年6月20日および21日に、東京において、「第3回G7データ保護・プライバシー機関ラウンドテーブル会合」(以下「本会合」という。)を開催した。本会合では、データ保護・プライバシー分野における規制協力のためのグローバルな課題に取り組み、具体的な措置を策定することが決定され、①個人データの保護を図りつつ、利活用を進めるDFFT(データ・フリー・フロー・ウィズ・トラスト)の推進、②生成AIを始めとする先端技術、および③執行協力強化の3つの柱に基づき議論が行われ、これらに関する課題認識や具体的な方策などが確認された。特に、②に関しては、「生成AIに関する声明」の形で公表されたことが注目される。また、上記3つの分野で共有された認識に基づき、2023年から2024年の間の行動計画も採択された
以下では、本会合における上記3つの柱に関する議論を概観しつつ、公表された「生成AIに関する声明」の概要を紹介する。
2 3つの柱に関する議論の概要および行動計画[1]
⑴ 第1の柱(DFFT)について
第1の柱であるDFFTについては、まず、個人データの高水準の保護を含む「信頼性」の確保がデータの自由な流通を促進するための基本的要件であることが確認された。また、データ移転ツールの相互運用性を促進させるため、データ保護に関する様々な法制度および国際的枠組みを比較分析し共通要素を特定することや、グローバル規模のデータ移転ツールの開発についての助言等にも関与していくことも確認された。
⑵ 第2の柱(先端技術)について
第2の柱である先端技術については、AI技術の開発者および利用者が、法的義務を遵守していることを証明し、必要または適切な場合には、関連するデータ保護当局と協議し、リスクを軽減する措置の実施を確保することの必要性が強調されている。特に顔認識技術(FRT)に対する懸念が示され、同技術による個人情報の適切な利用に関する原則および期待にかかる2022年のGPA(Global Privacy Assembly)決議[2]を歓迎している。加えて、プライバシー強化技術(PETs)の重要性に言及したうえで、PETs導入によるほかの規制分野との相互作用(競争法等)への考慮や、PETsのケーススタディの開発および専門用語集の作成予定についても言及している。
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(ごとう・みき)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー、弁護士・ニューヨーク州弁護士。理学・工学のバックグラウンドを有し、知的財産や各種テクノロジー(IT、データ、エレクトロニクス、ヘルスケア等)、ゲーム等のエンタテインメントに関わる案件を幅広く取り扱っている。ALB Asia Super 50 TMT Lawyers(2021、2022)、Chambers Global(IP分野)ほか選出多数。AIPPIトレードシークレット常設委員会副議長、日本ライセンス協会理事。
(とくなが・たいせい)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2019年東京大学法学部卒業。2021年東京大学法科大学院卒業。2022年弁護士登録(第二東京弁護士会)。
<事務所概要>
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