SH4606 規制改革推進会議、「法人の実質的支配者情報の取得等に関する制度整備と定款認証の見直しについて」検討すべき旨の意見を取りまとめ 豊岡啓人(2023/08/29)

組織法務商業・法人登記

規制改革推進会議、「法人の実質的支配者情報の取得等に関する制度整備と定款認証の見直しについて」検討すべき旨の意見を取りまとめ

岩田合同法律事務所

弁護士 豊 岡 啓 人

 

1 はじめに

 規制改革推進会議[1]は、2023年7月31日、意見書「法人の実質的支配者情報に関するFATF勧告への対応及び起業家の負担軽減に向けた定款認証の見直しについて」を議決し、法人の実質的支配者情報の取得等に関する制度整備と定款認証の見直しについて検討すべき旨の意見を取りまとめたことから、以下では、その概要について解説する。

 

2 法人の実質的支配者情報の一元的かつ継続的・正確な把握を可能とする枠組みに関する制度整備について

⑴ 第4次対日相互審査報告書における日本に対する評価

 マネー・ローンダリング対策における国際協調を推進するために設立されたFATF(Financial Action Task Forceの略称。金融活動作業部会)は、その参加国が遵守すべき国際基準(FATF勧告)を定め、参加各国の遵守状況について相互審査[2]を行っている。日本に対しては、2019年に4回目の相互審査(第4次対日相互審査)が実施され、2021年8月30日に第4次対日相互審査報告書(原題:「 MUTUAL EVALUATION REPORT OF JAPAN 」)が公表された[3]

 同報告書は、法人の実質的支配者情報の取得・把握の実効性を確保する措置を講ずるよう求めるFATF勧告24の遵守状況について、日本を「一部不適合」(Partially Compliant:4段落中下から2番目の評価、不合格水準)と評価した。さらに、このFATF勧告24は、2022年3月に、後述するより厳格な内容に改訂されており、第5次対日相互審査(2025年以降実施予定)までにこの水準をクリアする必要がある。

⑵ FATF勧告24へ適合するための制度整備

 2022年3月改訂後のFATF勧告24は、捜査当局によって、法人の実質的支配者をタイムリーに特定するメカニズムとして、①法人に対して実質的支配者情報の取得・保持の義務化(カンパニーアプローチ)、②公的組織(税当局、金融情報機関、登録機関等)による実質的支配者情報の保持(レジストリアプローチ)又はその代替的メカニズムの義務化などを求めている。

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(とよおか・ひろと)

岩田合同法律事務所弁護士。2014年東京大学法学部卒業、2016年同大学法科大学院修了。2017年弁護士登録、2018年から2022年まで石嵜・山中総合法律事務所勤務。人事労務分野を中心に企業法務全般を取り扱う。

岩田合同法律事務所 http://www.iwatagodo.com/

<事務所概要>
1902年、故岩田宙造弁護士(後に司法大臣、貴族院議員、日本弁護士連合会会長等を歴任)により創立。爾来、一貫して企業法務の分野を歩んできた、我が国において最も歴史ある法律事務所の一つ。設立当初より、政府系銀行、都市銀行、地方銀行、信託銀行、地域金融機関、保険会社、金融商品取引業者、商社、電力会社、重電機メーカー、素材メーカー、印刷、製紙、不動産、建設、食品会社等、我が国の代表的な企業等の法律顧問として、多数の企業法務案件に関与している。

<連絡先>
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規制改革推進会議、法人の実質的支配者情報に関するFATF勧告への対応及び起業家の負担軽減に向けた定款認証の見直しについて(7月31日付)
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/publication/opinion/230731_general16_03.pdf

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