厚労省、企業によるGSC上の人権等尊重取組支援で検討会設置・初会合開催
――企業の人権尊重責任を巡り2022年9月策定「ガイドライン」に沿った取組みを具体化へ――
厚生労働省は8月23日、「国内の労働分野における政策手段を用いた国際課題への対応に関する検討会」(事務局・大臣官房国際課)の初会合を開いた。
開催前日となる同月22日に公表された会合資料によると、本検討会は大臣官房総括審議官(国際担当)が有識者を参集、構成員として大学・大学院教授ら3名ほか労働政策研究・研修機構、日本アセアンセンター、アジア経済研究所から各1名が参画し、計6名が就任した。(i)国際的な人権尊重の社会的要請の高まりなどを受けて企業においても人権尊重が求められ取組みが広がるなか、最近では(ii)G7倉敷労働雇用大臣宣言(2023年4月23日)、(iii)G7広島首脳コミュニケ(2023年5月20日)において、グローバル・サプライチェーン(GSC)における人権・国際労働基準などの尊重の確保、SDGsの目標8「働きがいも経済成長も」に沿ったディーセント・ワークの促進が改めてコミットされている。
わが国では企業による人権尊重を促進するためのガイドラインとして、ビジネスと人権に関する行動計画の実施に係る関係府省庁施策推進・連絡会議決定「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」(2022年9月13日)が策定されている。厚労省ではこれを踏まえ「企業がガイドラインに沿った取組みを進めるに当たり、具体的に、①いかなる点について、②いかなる行動が、求められているのか」といった視点から企業の自主的・具体的な取組みを支援すべく「日本が国内でこれまで実施してきた政策的経験・知見も活用しながら、労働分野での課題に対する解決のプロセス及び国際協力を推進するための戦略について、検討する」として今般の設置・開催に至ったものである。
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検討事項として掲げられるのは、次のとおり(編注・開催要綱より抜粋)。「(1)我が国の企業がGSCにおいて尊重すべき事項について、『労働における基本的な原則及び権利に関するILO宣言』に述べられている基本的権利に関する原則に沿って示す。併せて、企業が取組を進める上で生じている労働分野での具体的な課題について、厚生労働省がこれまで国内において実施してきた既存の法令遵守や労働安全衛生等の施策手法の活用可能性を検討する。(2)GSCにおける労働分野の課題を改善、是正するための国際協力の在り方について検討する。」
上記「基本的権利に関する原則」には注記が付され、現在の5分野「結社の自由及び団体交渉権の実効的な承認」「あらゆる形態の強制労働の廃止」「児童労働の実効的な禁止」「雇用及び職業についての差別の撤廃」「安全で健康的な作業環境」が示されている。検討会においてはこれら5つの原則を巡り、具体的な課題が次のように設定された。(A)それぞれに関する国内での整理・解釈・対策はどのようなものか。(B)ステークホルダーが抱える課題、求める知見は何か。(C)国内政策知見を基にどのような支援を提供できるのか。
会合資料2「国内の労働分野における政策手段を用いた国際課題への対応について」では、検討の拠りどころとなるべき(ア)ILO基本条約(中核的労働基準)について、たとえば上記原則「結社の自由及び団体交渉権の実効的な承認」を具体化した条約として「結社の自由及び団結権の保護に関する条約(87号)」「団結権及び団体交渉権についての原則の適用に関する条約(98号)」を挙げるなど、5原則に対応する10条約が示される(5頁)。(イ)国内の取組みとしては、ビジネスと人権に関する行動計画に係る関係府省庁連絡会議策定「ビジネスと人権に関する行動計画」(2020年10月16日)および上記ガイドラインが挙げられ(6頁)、また(ウ)国際的な規範・ガイダンス・指針等とし、国際連合「ビジネスと人権に関する国連指導原則」(2011年3月21日)ほか「ILO多国籍企業宣言」「OECD多国籍企業行動指針」などが整理して掲げられる(7頁)。適宜参考とされたい。
明らかになった「今後の予定(案)」によると、検討会では9月中2回・10月中1回の第2回~第4回会合開催により、労使団体、関係団体、取組みが進む企業を対象としてヒアリングをかさねる方針。各団体の現在の取組み(実施事項やステークホルダーなど)や「日系企業が進出している国・地域における課題」「企業が取組を進める上での課題」などの把握を進めていく。
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厚労省、国内の労働分野における政策手段を用いた国際課題への対応に関する検討会(第1回)資料〔企業のグローバル・サプライチェーンにおける労働分野の人権尊重をめぐる具体的課題への対処〕
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_34806.html