個人情報保護委、サーマルカメラの使用および製造・販売における
事業者の対応について注意喚起
――法に基づく留意点を取りまとめ、顔画像等「取得」「利用目的」の設置場所への掲示など求める――
個人情報保護委員会は9月13日、サーマルカメラを使用する場合および製造・販売する場合における事業者の個人情報の取扱いを巡り注意喚起を行うとして(A)サーマルカメラを使用する場合の個人情報保護法上の留意点について(注意喚起)、(B)サーマルカメラを製造・販売する場合の個人情報保護法上の留意点について(注意喚起)を発表した。
(A)は「サーマルカメラを使用する事業者等の皆様」へ、(B)は「サーマルカメラを製造・販売する事業者の皆様」へ宛て発出された。ただし(B)では「サーマルカメラを使用する事業者等向けの注意喚起等も参照の上、サーマルカメラのユーザーに対し……適切に周知を図」るよう要請しており「サーマルカメラのユーザーに周知を図っていただきたい事項」を特記。いずれも9月13日に開かれた第253回個人情報保護委員会における審議を経て即日公表された。
本注意喚起がいう「サーマルカメラ」については「新型コロナウイルス感染症の対策のために急速に普及したサーマルカメラ(赤外線を検知して温度を計測するカメラ)」であって「顔画像を取得する機能を有するもの」と定義されている。(ア)当該「顔画像」について特定の個人を識別することができるものは個人情報保護法(平成15年法律第57号)2条1項の「個人情報」に該当することから(イ)「サーマルカメラにより特定の個人を識別することができる顔画像等の個人情報を取得している場合」について、当該サーマルカメラを使用する事業者等は当該サーマルカメラにより個人情報を取り扱っているものとされる。
また(ウ)「サーマルカメラにより取得した個人情報に該当する顔画像を含む情報の集合物が、特定の個人に係る画像情報を検索することができるようになっている等、電子計算機を用いて特定の個人情報を検索することができるよう体系的に構成されている場合」にあっては、当該顔画像を含む情報の集合物は個人情報保護法16条1項の「個人情報データベース等」に該当する。
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個人情報保護委員会はこのような解釈を示したうえで「サーマルカメラにより個人情報を取り扱っていても、事業者等においてこのことが十分に認識されず、適用を受ける法の規律が遵守されずに顔画像の取得、サーマルカメラの廃棄等が行われている可能性がある」として今般、個人情報保護法に基づく留意点として取りまとめ、注意喚起を行ったものである。
上記(A)サーマルカメラを使用する事業者等に対しては、まず「当該サーマルカメラの取扱説明書等により、当該サーマルカメラが、特定の個人を識別することができる顔画像を取得する機能を有しているかどうか等」の確認を求める。必要に応じて「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」などおよび「カメラに関するQ&A(「『個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン』に関するQ&A」より抜粋)」についても参考とすることを求めながら、具体的には(I)サーマルカメラにより「個人情報」(法2条1項)を取り扱う場合の留意点、(II)サーマルカメラで取得した顔画像の情報が「個人情報データベース等」(法16条1項)を構成する場合の留意点――の2つの留意点を踏まえた適正な取扱いを要請している。
たとえば(I)によると、サーマルカメラを使用する「個人情報取扱事業者」(法16条2項)においてはサーマルカメラにより取り扱う個人情報について、(1)①顔画像等の利用目的をできる限り具体的に特定しなければならず(法17条1項)、②「取得の状況からみて利用目的が明らかであると認められる場合」(法21条4項4号)に当たらない場合、あらかじめその利用目的を公表している場合を除き、すみやかに、その利用目的を本人に通知し、または公表しなければならない(法21条1項)。この点、個人情報保護委員会では「例えば、特定した利用目的を、ホームページ等において公表する、サーマルカメラの設置場所に分かりやすく掲示するといった方法が考えられる」としている。
また(2)①個人情報取扱事業者は、偽りその他不正の手段により個人情報を取得してはならないところ(法20条1項)、②「サーマルカメラの設置状況や外観等から、サーマルカメラにより検温が行われているのみならず、自らの個人情報が取得されていることが本人において容易に認識可能といえない場合」においては、容易に認識可能とするための措置を講じることを求めている。具体的措置としては「サーマルカメラが顔画像を取得している旨をサーマルカメラの設置場所に掲示する」と例示しており、さらに「設置状況等からサーマルカメラにより自らの個人情報が取得されていることが本人において容易に認識可能であったとしても、このような掲示等の措置を講じることにより、より容易に認識可能とすることが望ましい」と述べている。
(B)サーマルカメラを製造・販売する事業者に対しては、上掲・個人情報保護法ガイドライン(通則編)やカメラに関するQ&Aを必要に応じて参考とすることを求めつつ、「サーマルカメラのユーザーに周知を図っていただきたい事項」を特に記すことにより、サーマルカメラを使用する事業者等への適切な周知を要請するかたちが採られた。
サーマルカメラの製造・販売事業者において求められる「周知を図っていただきたい事項」は次の3点である。製造・販売するサーマルカメラについて、①「顔画像を取得している場合」は、ユーザーがそのことを認識できるよう「取扱説明書に顔画像を取得していることを記載する等の適宜の方法により明示する」こと。②「顔画像を取得し保存する機能を有する場合」は、ユーザーが顔画像のデータが保存されていることを認識したうえで、保存された顔画像のデータの確認、消去等を適切に行うことができるよう「顔画像のデータを保存していること、データの確認方法、及びデータの消去方法等について、取扱説明書に記載する等の適宜の方法により明示する」こと。③そのユーザーにおいて「法の規律を遵守する前提として認識することが有用と考えられる事項を必要に応じて周知する」こと。
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個人情報委、サーマルカメラの使用等に関する注意喚起について
https://www.ppc.go.jp/files/pdf/230913_kouhou_houdou.pdf
個人情報保護委員会(第253回)資料〔個人情報の保護に関する法律施行規則の一部を改正する規則案等に関する意見募集について/サーマルカメラの使用等に関する注意喚起について〕
https://www.ppc.go.jp/aboutus/minutes/2023/20230913/