知的財産戦略本部「AI時代の知的財産権検討会(第1回)」を開催
――AIと知的財産権等との関係をめぐる課題について対応方策等を検討――
岩田合同法律事務所
弁護士 上 西 拓 也
1 はじめに
2023年10月4日、内閣府知的財産戦略本部は、生成AIをはじめとするAI技術の急速な進歩が惹起する、AIと知的財産権等との関係をめぐる課題への対応について、必要な対応方策等を検討するための「AI時代の知的財産権検討会」(以下、本検討会)第1回を開催した。
AIは、デジタル化・デジタル技術の活用を加速させ、生産性向上のみならず、 様々な社会課題解決に資する可能性を有する一方、機密情報の漏洩等のリスクのほか、著作権侵害のリスクがあることが指摘されている。
本検討会は、生成AIの開発・提供・利用の促進により、我が国の産業競争力の強化を図っていくためにも、著作権を含む知的財産権全体と生成AIとの関係について整理し、必要な方策等を検討することを目的としている。
2 本検討会における検討課題等
⑴ 生成AIの発展
AIをめぐる最近の動向として、いわゆる生成AIの技術が急速に発展している。生成AI(ジェネレーティブAI)とは、コンテンツやモノについてデータから学習し、それを使用して創造的かつ現実的な、まったく新しいアウトプットを生み出す機械学習手法と説明される[1]。
対話形式で高精度な文章を作成するチャットボット「ChatGPT」のように大規模なテキストデータを事前に学習させることにより、数例のタスクを与えただけで、文章生成、質問応答など様々な言語処理タスクを解くことを可能とする「大規模言語モデル(LLM)」のほか、言語で指示をすると指示に合った画像を生成するAI(例:「Stable Diffusion」)、生成したい音楽に含まれる要素を文章で入力することで曲を作成するAI(例:「Stable Audio」)など、生成AIは、文章のみならず、標章、画像、音声などの分野にまで拡大しており、著作権法だけでなくその他の知的財産権保護法(商標法、特許法、意匠権、不正競争防止法)の適用関係についても問題となりうる。
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(うえにし・たくや)
岩田合同法律事務所弁護士。2008年東京大学法学部卒業、2010年東京大学法科大学院卒業。2011年弁護士登録。『Q&A 家事事件と銀行実務』(共著、日本加除出版、2013年)、「各業務における反社勢力対応のポイント」(共著。銀行実務658号)、『Q&Aインターネットバンキング』(共著 金融財政事情研究会 2014年)等著作多数。
岩田合同法律事務所 http://www.iwatagodo.com/
<事務所概要>
1902年、故岩田宙造弁護士(後に司法大臣、貴族院議員、日本弁護士連合会会長等を歴任)により創立。爾来、一貫して企業法務の分野を歩んできた、我が国において最も歴史ある法律事務所の一つ。設立当初より、政府系銀行、都市銀行、地方銀行、信託銀行、地域金融機関、保険会社、金融商品取引業者、商社、電力会社、重電機メーカー、素材メーカー、印刷、製紙、不動産、建設、食品会社等、我が国の代表的な企業等の法律顧問として、多数の企業法務案件に関与している。
<連絡先>
〒100-6315 東京都千代田区丸の内二丁目4番1号丸の内ビルディング15階 電話 03-3214-6205(代表)
内閣府知的財産戦略本部「AI時代の知的財産権検討会(第1回)」の開催
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/ai_kentoukai/gijisidai/index.html