SH4660 中小企業庁、「中小M&Aガイドライン」を改訂 佐橋雄介/德永大誠(2023/10/19)

組織法務M&A・組織再編(買収防衛含む)

中小企業庁、「中小M&Aガイドライン」を改訂

アンダーソン・毛利・友常法律事務所*

弁護士 佐 橋 雄 介

弁護士 德 永 大 誠

 

1 はじめに

 2020年3月、中小企業庁は「中小M&Aガイドライン-第三者への円滑な事業引継ぎに向けて-」(以下「本ガイドライン」という。)を策定し、後継者不在の中小企業における事業承継手法としてのM&Aを適切な形で進めるための手引きを示すとともに、M&Aを支援する関係者がこれを適切にサポートするための基本的事項を示した。その後約3年が経過する中で、中小企業におけるM&Aは広く認識されるようになり、その市場が急速に拡大する一方で、マッチング支援やM&Aの手続進行に関する総合的な支援を専門に行う民間のM&A専門業者(主に仲介者・FA)に関して様々な課題が見受けられるようになった。

 このような状況を受けて、中小企業庁は、「中小企業の経営資源集約化等に関する検討会」(第8回、2023年3月16日開催)において課題への対応の方向性を議論した上で、かかる検討会での議論を踏まえ、2023年9月、本ガイドラインを改訂(以下「本改訂」という。)した[1], [2], [3]

 本改訂では、特にM&A専門業者向けへの基本事項および中小企業に向けた仲介者・FAへの依頼における留意点等を拡充するとともに、中小M&Aに関する行政・民間の取組を紹介している。主な改訂事項は以下の①から⑥であるが、本稿では紙幅の関係から、①から④までのテーマについて、以下で説明する[4]

 

  1. ① 仲介者・FAの手数料の整理
  2. ② M&A専門業者の支援の質の確保・向上に向けた取組
  3. ③ 仲介契約・FA契約締結前の書面による重要事項の説明
  4. ④ 仲介契約・FA契約における依頼者の直接交渉の制限に関する条項の留意点
  5. ⑤ その他M&A専門業者に依頼する場合の留意点(セカンド・オピニオン、マッチングにおける支援機関の活用等)の追加
  6. ⑥ 中小M&Aにおける行政・民間の取組の推進状況の反映等

 

 

⑴ 仲介者およびFAの手数料の整理

<問題点>

 M&Aの依頼者である中小企業にとっては、利用する仲介者・FAの手数料について、算定方法の複雑さ、最低手数料の適用等の理由から、自己が負担する手数料を適切に把握することは必ずしも容易ではない。

<改訂のポイント>

 手数料の算定手法としては、レーマン方式(下図参照)が用いられることが多いが、「基準となる価額」については様々な考え方があり、採用される考え方によって報酬額が大きく変動する可能性がある。そのため、この点を指摘した上で、「基準となる価額」の考え方および金額の目安や、手数料額の目安を確認しておくことが重要である旨明記している。

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(さはし・ゆうすけ)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー。2006年東京大学法学部卒業。2008年弁護士登録。2015年University of Southern California(LLM)修了。2015-2016年フランスのMcDermott Will & Emery法律事務所勤務。2016年ニューヨーク州弁護士登録。日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)。主に国内外の企業買収、組織再編、ジョイントベンチャー等のM&A案件や一般企業法務、商取引等のコーポレート案件を取り扱っている。

 

(とくなが・たいせい)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2019年東京大学法学部卒業。2021年東京大学法科大学院卒業。2022年弁護士登録(第二東京弁護士会)。

 

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/

<事務所概要>
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国に拠点を有する。

<連絡先>
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* 「アンダーソン・毛利・友常法律事務所」は、アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業および弁護士法人アンダーソン・毛利・友常法律事務所を含むグループの総称として使用。

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