欧州委員会によるサステナビリティ関連の開示義務およびデューディリジェンス実施義務等の簡素化法案の発表
アンダーソン・毛利・友常法律事務所*
弁護士 横 井 傑
弁護士 新 庄 絢
1 はじめに
欧州委員会は、2025年2月26日、サステナビリティ関連の開示義務やデューディリジェンス実施義務を大幅に簡素化する一連の法案(以下「本改正案」という。)を発表した[1]。
欧州委員会は、2025年1月29日にEU域内産業の競争力強化等を掲げて「競争力コンパス(Competitiveness Compass)」を発表しており、企業のサステナビリティ規制負担が成長を阻害しているとの産業界や欧州議会右派からの指摘を受け、企業の行政事務の負担軽減を推進している。本改正案は、これを受ける形で、EU企業の成長、技術革新、質の高い雇用の創出を支援するためにより有利なビジネス環境を整備することを目的として、特に中小企業保護を念頭に置いて、企業の行政事務負担を軽減する施策を規定している。
本改正案における簡素化の対象は、企業持続可能性報告指令(以下「CSRD」という。)、企業持続可能性デューディリジェンス指令(以下「CSDDD」という。)、炭素国境調整メカニズム規則(以下「CBAM」という。)、EU投資規則およびEUタクソノミー規則である。欧州委員会は、本改正案の実施により、少なくとも25%の行政事務負担の軽減(中小企業については少なくとも35%減)を目標に掲げており、年間約63億ユーロの行政コストの削減効果を見込んでいる。本改正案は、今後EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会で審議される予定であり、今後の動向が注目される。
本稿では、本改正案が提案する主要なポイントを紹介する。
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(よこい・すぐる)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー。2005年慶大法学部卒業。2009年早大ロー修了。2010年弁護士登録(第二東京弁護士会)。2020年Georgetown Law(LL.M)修了。元AMT北京オフィス・上海オフィス代表。2021年より香港提携事務所Nakamura & Associates外国法登録弁護士。主な取扱分野は、中国・香港法務、経済安全保障・通商法務、サステナビリティ法務等。
(しんじょう・あや)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2020年慶應義塾大学法学部卒業。2022年東京大学法科大学院修了。2023年弁護士登録(第二東京弁護士会)。
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/
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