米国による懸念国向け半導体関連輸出規制の強化
アンダーソン・毛利・友常法律事務所*
弁護士 藤 田 将 貴
1 はじめに
2023年10月17日、米国商務省産業安全保障局(BIS)は、輸出管理規則(EAR)に基づき、以下の3つの半導体関連輸出規制にかかる暫定最終規則(IFR)(以下、総称して「本規制」という。)を公表した。
本規制は、2022年10月7日に中国向け半導体関連輸出規制(以下「2022年10月規制」という。)[4]の導入後、規制を回避する製品の開発や第三国経由の中国向けの迂回輸入がみられたことを踏まえ、その抜け穴を塞ぐことを主たる目的としている。
本規制は、規制対象となる仕向地を中国とマカオ以外に拡大するなど、2022年10月規制を大幅に強化しており、実務に与える影響が大きいと考えられる。そのため、半導体または半導体関連製品の事業を行う企業を中心に、日本企業はその内容を精査の上、自社事業ないしサプライチェーンへの影響を見極めるとともに、必要な対応を早急に講じる必要がある。
本規制は、一部の規定を除き2023年11月17日から施行される。なお、同年12月18日までパブリックコメントが募集されている。
以下では、本規制のうち特に重要と考えられる箇所を中心に、その概要を解説する[5]。
2 本規制の概要
⑴ 対象品目の拡大
以下のとおり、輸出規制の対象となる半導体および半導体製造装置を拡大する。
ア 対象半導体の拡大
ECCN 3A090について、「性能密度」パラメータを新たな基準として導入し、対象範囲を拡大する。
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(ふじた・まさき)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー。2003年早稲田大学法学部卒業。2006年京都大学法科大学院修了。2007年弁護士登録(東京弁護士会)。2016年University of California, Berkeley(LLM)修了。2017年ニューヨーク州弁護士登録。大手総合商社法務部への出向経験を有する。経済安全保障・通商(米国・英国・EUの経済制裁及び貿易管理を含む)、M&A、事業再生分野を中心に取り扱う。主な著書・論文:『英文M&Aドラフティングの基礎』(共著)(金融財政事情研究会、2023)、「グローバル法務 日本企業が対応すべき世界の経済安全保障と人権の課題」(共著)会社法務A2Z 2023年1月号、「米国の経済制裁の基礎知識と実務対応のポイント」(Business Lawyers(ウェブサイト)、2022)、「米財務省 CFIUS2022年次報告書を公表」(商事法務ポータル、2023)ほか多数。
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