デジタル庁、第1回「AI時代における自動運転車の
社会的ルールの在り方検討サブワーキンググループ」開催
アンダーソン・毛利・友常法律事務所*
弁護士 井 上 乾 介
弁護士 藤 井 駿太郎
弁護士 福 山 和 貴
1 はじめに
自動運転は、交通安全の向上、運転手不足の解消など、わが国の社会的課題の解決への効果が期待されている一方、人身事故の発生や、それに伴う被害者の救済といった課題も存在する。自動運転の社会実装のためには、安全性の向上、地域住民における安全性への理解(受容性)、自動運転車による輸送サービスの採算確保(事業性)といった課題を早急に克服する必要がある。そこで、事故等が発生した場合の責任制度その他の社会的ルールの在り方について、①被害者の十全な救済を確保、および、②先端技術を用いる自動運転車の責任ある社会実装の推進という観点から、論点(短期的論点、中長期的論点)の整理および目指すべき方向性について検討を行うべく[1]、デジタル庁により、「AI時代における自動運転車の社会的ルールの在り方検討サブワーキンググループ」(以下「本グループ」という。)が設置され、2023年12月25日に本グループの第1回(以下「本検討会」という。)が開催された[2]。本稿では、本検討会で取り上げられた議題のうち、自動運転に関する現在地、海外制度比較、想定論点等について紹介する。
2 本検討会の概要
⑴ 自動運転車の実装による社会課題の解決
日本では、将来の人口減少や高齢化等により地域の交通への負担・不安が増大する一方で、長期的な利用者の減少や賃金水準の低さから安定的な公共交通サービスの提供に課題が生じている[3]。
このような地域公共交通における社会課題を解決すべく、自動運転について、国際標準化も見据え、2025年度目途50か所程度、2027年度100か所以上の目標を実現するべく、2024年度において、社会実装につながる「一般道での通年運行事業」を20か所以上に倍増するとともに、自動運転のすそ野拡大を図るため、すべての各都道府県で1か所以上の計画・運行を目指している。また、交差点等での円滑な走行を支援する「路車協調システム」の整備など、道路側からの支援も推進し、自動運転の社会実装を推し進めている[4]。「路車協調システム」の具体的内容は以下の図を参照されたい。
出典:「自動運転の実現に向けたインフラ支援について」
(国土交通省、第80回基本政策部会配布資料)[5]8頁
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(いのうえ・けんすけ)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所 スペシャル・カウンセル。2004年一橋大学法学部卒業。2007年慶応義塾大学法科大学院卒業。2008年弁護士登録(東京弁護士会)。2016年カリフォルニア大学バークレー校・ロースクール(LLM)修了。2017年カリフォルニア州弁護士登録。著作権法をはじめとする知的財産法、個人情報保護法をはじめとする各国データ保護法を専門とする。
(ふじい・しゅんたろう)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所名古屋オフィスアソシエイト。2013年中央大学法学部卒業。2015年東京大学法科大学院卒業。2016年弁護士登録(2019年より愛知県弁護士会)。主な業務分野は、IT、個人情報保護法など。
(ふくやま・かずき)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。一橋大学法学部・一橋大学法科大学院卒業。2022年弁護士登録(第一東京弁護士会)。
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/
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