SH4832 金融庁、「保証人の自己破産回避に向けた事例集」を公表 藤田将貴(2024/02/29)

取引法務倒産・事業再生

金融庁、「保証人の自己破産回避に向けた事例集」を公表

アンダーソン・毛利・友常法律事務所*

弁護士 藤 田 将 貴

 

1 はじめに

 金融庁は、2024年1月31日付で、「保証人の自己破産回避に向けた事例集」(以下、「本事例集」という。)を公表した[1]

 本事例集は、「経営者保証に関するガイドライン」(以下、「ガイドライン」という。)に基づき保証債務整理を行ったことで保証人の自己破産回避に繋がった事例を金融庁が金融機関から収集し、とりまとめたものである。

 

2 本事例集の目的等

⑴ ガイドラインの概要

 ガイドラインは、中小企業の経営者保証に関する契約時および履行時等における中小企業、経営者および金融機関の対応についての自主的自律的な準則として、経営者保証に関するガイドライン研究会(事務局:日本商工会議所・一般社団法人全国銀行協会。以下、「ガイドライン研究会」という。)により2013年12月に策定され、2014年2月からその適用が開始された。

 ガイドラインには、新規融資時、融資実行後および事業承継の局面における経営者保証に依存しない融資の実現に向けた準則が定められている。また、事業再生・廃業時における保証債務整理の準則も定められており、経営者が早期の事業再生または廃業を決断する等の一定の条件を満たした場合には、一定期間の生計費や華美でない自宅等の破産手続における自由財産(破産法34条3項、4項)を超える資産(いわゆる「インセンティブ資産」)を手元に残し得るとするなど、主たる債務を含む早期の債務整理を動機付けるような制度設計となっている。

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(ふじた・まさき)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー。2003年早稲田大学法学部卒業。2006年京都大学法科大学院修了。2007年弁護士登録(東京弁護士会)。2016年University of California, Berkeley(LLM)修了。2017年ニューヨーク州弁護士登録。大手総合商社法務部への出向経験を有する。事業再生分野、経済安全保障・通商(米国・英国・EUの経済制裁及び貿易管理を含む)、M&Aを中心に取り扱う。主な著書・論文:『ケースでわかる実践「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」』(共著)(中央経済社、2022)、「『中小企業の事業再生等に関するガイドライン』およびQ&Aの改定の公表」(共著)(商事法務ポータル、2024)、「金融庁、『中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針』等の一部改正(案)の公表」(共著)(商事法務ポータル、2023)、「廃業時における経営者保証に関するガイドラインの基本的考え方の改定について」(共著)(商事法務ポータル、2023)、『英文M&Aドラフティングの基礎』(共著)(金融財政事情研究会、2023)、「外資系企業の日本からの撤退が問題となる事案における実務上の留意点」(共著)事業再生と債権管理2022年7月号、「Restructuring and insolvency in Japan: Overview」(共著)(Practical Law – A Thomson Reuters Legal Solution、2021)、「米国の経済制裁の基礎知識と実務対応のポイント」(Business Lawyers(ウェブサイト)、2022)、「米国による懸念国向け半導体関連輸出規制の強化」(商事法務ポータル、2023)ほか多数。

 

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