SH4842 金融庁、「インパクト投資に関する基本的指針(案)」を公表 龍野滋幹/秋野博香(2024/03/06)

組織法務サステナビリティ

金融庁、「インパクト投資に関する基本的指針(案)」を公表

 アンダーソン・毛利・友常法律事務所*

弁護士 龍 野 滋 幹

弁護士 秋 野 博 香

 

1 はじめに

 金融庁のインパクト投資等に関する検討会は、2024年2月19日、同月20日に開催された「インパクト投資に関する検討会」(以下、「本検討会」という。)(第9回)の議事次第を公表し、検討会における配布資料として「インパクト投資に関する基本的指針(案)」[1](以下、「指針案」という。)が公表された。

 インパクト投資とは、投資収益の確保に止まらず、社会課題を考慮し、経済社会全体の便益に寄与するインパクトの創出を意図する投資を意味する。投資収益の確保と社会課題を考慮した持続可能性の実現の両立は、一般的なESG投資においても目指されるが、インパクト投資では、投資がもたらす社会・環境課題の解決を事前に設定し、その実現のために投資を行うという構造で、投資がもたらす課題解決をより強く意図するものである。

 

出典:「インパクト投資等に関する検討会報告書概要」[2](金融庁)1頁

 

 本検討会は、世界的なサステナビリティ向上の機運に乗じてインパクト投資に注目が集まる中、社会・環境課題の解決やスタートアップを含む新たな事業の創出に資するインパクト投資等の拡大に向けた方策について議論を行うことを目的として、金融庁が設置した会議体である。

 本検討会においては、2022年10月より、計8回にわたり、社会・環境的効果と投資収益の実現を図るインパクト投資の基本的意義や考え方、拡大に向けた方策等が議論された。当該議論を踏まえ、インパクト投資の基本的な考え方やプロセスを取りまとめたものとして、2023年6月30日に「インパクト投資等に関する検討会報告書」[3]が公表された。指針案は、当該報告書の別紙として当初公表され、2023年10月10日までパブリックコメントに付されていた[4]。今回公表された指針案は、当初公表された内容がアップデートされたものであり、より詳細な記載となっている。

 以下では指針案のポイントを概説する。

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(たつの・しげき)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー。2000年東京大学法学部卒業。2002年弁護士登録(第二東京弁護士会)、当事務所事務所入所。2007年米国ニューヨーク大学ロースクール卒業(LL.M.)、2008年ニューヨーク州弁護士登録、2007年~2008年フランス・パリのHerbert Smith法律事務所にて執務。2014年から東京大学大学院薬学系研究科・薬学部「ヒトを対象とする研究倫理審査委員会」審査委員。国内外のM&A、ジョイント・ベンチャー、投資案件やファンド組成・投資、AI・データ等の関連取引・規制アドバイスその他の企業法務全般を取扱っている。週刊東洋経済2020年11月7日号「「依頼したい弁護士」分野別25人」のM&A・会社法分野で特に活躍が目立つ2人のうち1人として選定。

 

(あきの・ひろか)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2018年慶應義塾大学法学部卒業。2019年東京大学法科大学院中退。2020年弁護士登録(第一東京弁護士会)。

 

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/

<事務所概要>
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国に拠点を有する。

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