SH4902 ベトナム:基礎賃金制度の廃止と民間企業労働者への影響 澤山啓伍/Truong Thi Thu Hoai(2024/04/23)

そのほか労働法

ベトナム:基礎賃金制度の廃止と民間企業労働者への影響

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 澤 山 啓 伍

ベトナム弁護士 Truong Thi Thu Hoai

 

 ベトナムでは、公務員等の賃金の算定基礎として「基礎賃金(lương cơ sở)」というものが定められています。基礎賃金は現状月額180万ドンで、公務員等の賃金はこの基礎賃金に公務員の階級に応じた係数(1.00~8.00)を掛けて計算されています。

 国会は、2024年7月1日から、2018年5月21日付共産党中央執行委員会決議第27-NQ/TW号(以下「決議27号」といいます。)に従った国家公務員及び民間企業の労働者に関する賃金政策の包括的改革を実施することを決定しました(2024年度の国家予算に関する国会決議第104/2023/QH15号)。その重要な内容の一つが、公務員等の賃金の算定基礎となる基礎賃金の廃止です。

 民間企業の賃金は、基礎賃金とは異なる「地域別最低賃金(lương tối thiểu vùng)」によりその下限が定められているため、基礎賃金の廃止は民間企業の労働者に直接適用されるものではありません。しかし、民間企業の労働者が加入する各種保険の保険料や給付額は、基礎賃金を組み込んだ計算式により算定されていますので、その限度で、民間企業にも影響します。以下では、その影響についてご説明します。

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(さわやま・けいご)

2004年 東京大学法学部卒業。 2005年 弁護士登録(第一東京弁護士会)。 2011年 Harvard Law School卒業(LL.M.)。 2011年~2014年3月 アレンズ法律事務所ハノイオフィスに出向。 2014年5月~2015年3月 長島・大野・常松法律事務所 シンガポール・オフィス勤務 2015年4月~ 長島・大野・常松法律事務所ハノイ・オフィス代表。

現在はベトナム・ハノイを拠点とし、ベトナム・フィリピンを中心とする東南アジア各国への日系企業の事業進出や現地企業の買収、既進出企業の現地でのオペレーションに伴う法務アドバイスを行っている。

 

(Truong Thi Thu Hoai)

2013年Hanoi Law University及び名古屋大学日本法教育研究センター(ハノイ)卒業後、2019年に名古屋大学大学院法学研究科にて法学博士号を取得。翌年ベトナム弁護士資格を取得し、長島・大野・常松法律事務所ハノイオフィスに入所。日越双方の法律に関する知識を活かして、ベトナムで事業活動を行う日本企業へのベトナム法のアドバイスを行っている。

 

長島・大野・常松法律事務所 http://www.noandt.com/

長島・大野・常松法律事務所は、500名を超える弁護士が所属する日本有数の総合法律事務所です。企業法務におけるあらゆる分野のリーガルサービスをワンストップで提供し、国内案件および国際案件の双方に豊富な経験と実績を有しています。

当事務所は、東京、ニューヨーク、シンガポール、バンコク、ホーチミン、ハノイおよび上海にオフィスを構えています。また、東京オフィス内には、日本企業によるアジア地域への進出や業務展開を支援する「アジアプラクティスグループ(APG)」および「中国プラクティスグループ(CPG)」が組織されています。当事務所は、国内外の拠点で執務する弁護士が緊密な連携を図り、更に現地の有力な法律事務所との提携および協力関係も活かして、特定の国・地域に限定されない総合的なリーガルサービスを提供しています。

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