インド:2020年を振り返る その他
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 山 本 匡
1. 2020年を振り返る
インドは世界の中でもCOVID-19の影響を大きく受けた国の1つである。2020年3月にインド全土でのロックダウンを実施する等、その感染開始当初から極めて厳格な措置が講じられた。2021年2月末現在、総感染者数は1,100万人、死者数は15万人を超えている。しかしながら、2020年9月をピークに感染者数は減少傾向に入り、2021年1月にはワクチンの接種が開始した。このまま感染状況が収束へと向かうことを期待したい。
2020年も多くの法律・制度の施行・改正等があった。主要なものをいくつかピック・アップすると、例えば以下のようなものが挙げられる(筆者が特に注目したもののみを挙げている。また、議会で承認されたが未施行のものもある。)。COVID-19のパンデミックの影響を受けたものが多く見られる。
関連法令名・通称等 | 概要 |
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会社法改正 (Companies (Amendment) Act, 2020) |
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COVID-19関連 |
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外国直接投資政策 (FDI Policy) |
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2019年消費者保護法 (Consumer Protection Act, 2019) |
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労働法の再編 |
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2. 2021年に施行・成立の可能性のある法律
再編された各種労働法及び今後制定される関連規則の施行や、2021-22年度予算案で触れられていた保険業に対する投資上限の緩和(49%から74%へ)等、2021年も重要な法律の施行・成立が予想されるが、その中でも、2019年個人データ保護法案(Personal Data Protection Bill, 2019)の動向には注目したい。現在、インドには個人情報の保護に特化した法律は存在せず、2000年情報技術法(Information Technology Act, 2000)に基づいて制定された規則(Information Technology (Reasonable Security Practices and Procedures and Sensitive Personal Data or Information) Rules, 2011)が個人情報の保護に関する主要な法規制である。2019年個人データ保護法案は、EUの一般データ保護規則(GDPR)をベースとしており、その影響を大きく受けている。しかしながら、例えば、同法案では一定の個人データについて、いわゆるデータローカライゼーションが求められることや、クリティカル個人データ(critical personal data)等のGDPRにはない概念を導入している等、GDPRと異なる規制も存在する。同法案は議会委員会で審議中であり、おそらく、今後修正されると思われるが、議会で承認・施行されれば、個人情報保護実務に大きな影響を及ぼすと思われるため、その動向を注視したい。
以 上
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(やまもと・ただし)
2003年弁護士登録。2009年から2017年にかけて、インド・シンガポールで勤務。2015年からヤンゴンにて随時執務。新興国を中心に海外進出、各種リーガル・サポートに携わっている。
長島・大野・常松法律事務所 http://www.noandt.com/
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