SH4921 人的資本経営の実践と情報開示の実務対応 第22回:人材版伊藤レポートないし人的資本経営の実践のポイント(その2) 堀田陽平(2024/05/13)

組織法務ディスクロージャー経営・コーポレートガバナンス

人的資本経営の実践と情報開示の実務対応
第22回:人材版伊藤レポートないし人的資本経営の実践のポイント(その2)

日比谷タックス&ロー弁護士法人

弁護士 堀 田 陽 平

 

第2部 人的資本経営の実践
 第22回:人材版伊藤レポートないし人的資本経営の実践のポイント(その2)

【今回の狙い】

 今回は、これまで行ってきた「人材版伊藤レポート」、「人材版伊藤レポート2.0」の解説を踏まえて、人材版伊藤レポートないしは人的資本経営の実践のポイントを解説します。

 

【今回の主なターゲット】

  • 取締役会、取締役会事務局
  • 経営戦略部門
  • サスティナビリティ部門
  • 人事部門担当(特にキャリア開発部門)
  • IR部門

 

1 はじめに

 前回の第21回では人材版伊藤レポートないし人的資本経営の実践のポイントについて解説しました。

 今回は、人材版伊藤レポートについてよく耳にする誤解について書いていきます。

 

2 よく聞く誤解

⑴ 誤解①:「結局何をすればよいか分からない」

 さて、最も多く聞かれる誤解は、「人材版伊藤レポートは、書いてあることが抽象的で、結局何をすればよいか分からない。」ということです。

 (“誤解”というにはやや乱暴かもしれませんが)この意見は、人材版伊藤レポートの狙いを正確に理解いただいていないことから生じるものだと思われます。

 すなわち、前回も解説したとおり、とにかく人材版伊藤レポートないしは人的資本政策の狙いは、「経営戦略と人材戦略の連動」です。

 そして、「経営戦略」がそれぞれの企業ごとに千差万別である以上、経営戦略と連動する人材戦略も千差万別です。

 そのため、経産省の報告書で、人材戦略について、箸の上げ下げまで指針を示すことはできないし、また、すべきでもないということになります。

 その観点からすると、「3つの視点・5つの共通要素」についても、これを整理することに疑問があり得ますが(実際、研究会においてもそのような意見が出されています。)、細かな人事施策については言及することはしないにせよ、考え方の視点、大枠については、一定の方向性を示すため、「3つの視点・5つの共通要素」を示しました。

 したがって、「何をすればよいか分からない」という疑問に対しては、そもそも正解のある領域ではないため、自らの経営戦略に従って、それと連動する人材戦略を、自ら考え、実践していくということが重要だというのが答えになります。

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(ほった・ようへい)

2016年弁護士登録(第69期。第二東京弁護士会)。2017年鳥飼総合法律事務所入所。
2018年7月現在の事務所へ移籍。2018年10月から経済産業省経済産業政策局産業人材政策室(当時。現在は「課」)に任期付き職員として着任。
経済産業省では、兼業・副業の推進、テレワークの推進、フリーランス政策等の柔軟な働き方に関する政策立案や、人材版伊藤レポートの策定等の人的資本経営の推進に関する政策立案等に従事。経済産業省から帰任後も人的資本経営の実践・開示に関するセミナーや寄稿を行う。

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