SH4977 ベンチャーキャピタルに関する有識者会議(第2回)開催――「推奨・期待される事項」のアウトライン(案)が示される 菅隆浩/稲村将吾(2024/06/17)

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ベンチャーキャピタルに関する有識者会議(第2回)開催
――「推奨・期待される事項」のアウトライン(案)が示される――

アンダーソン・毛利・友常法律事務所*

弁護士 菅   隆 浩

弁護士 稲 村 将 吾

 

1 はじめに

 ベンチャーキャピタルに関する有識者会議(第2回)が2024年5月28日に開催され、事務局説明資料の中で「推奨・期待される事項」のアウトライン(案)が示された[1]

 第1回の有識者会議においては、(ア)政府自身が指針を策定・公表することはグローバルなスタンダードに反すること、(イ)一律の行為規範となってしまうことの懸念等の意見が示されたことを踏まえて、事務局説明資料では、対応策として、(ア)プリンシプルについて、行為規範ではなく、「ファンドへの投資者(リミテッドパートナー、LP)及びファンド運営管理者(ゼネラルパートナー、GP)における推奨・期待される事項を定めるもの」とし、(イ)作成主体を有識者会議とし、(ウ)「LPが投資判断するに当たって自己の判断により推奨・期待される事項を考慮し、また、GP自身の判断により推奨・期待される事項を意識した運営がなされることによって、ファンドの資金調達・運用に係る実務において活用されるものとの位置づけ」とし、「政府により受入状況を集計・公表してフォローアップする位置づけではない」といった提案を行い、プリンシプルを定めることの慎重な意見に対して一定の配慮を行っている。

 以下では「「推奨・期待される事項」のアウトライン(案)」の概要について解説する。

 

2 「推奨・期待される事項」のアウトライン(案)の適用対象

 プリンシプルに関する適用対象としては、(ア)不特定多数のLPから出資を募るわけではなく、出身母体の事業や研究対象における技術革新(いわゆるキャピタルゲインではなく事業上のシナジーの発生)を企図するCVC・金融系・大学系VCや、(イ)不特定多数のLPから出資を募ることを目的としてはいるが、その段階にはない初期段階のVCの取扱いが論点となっていた。第2回有識者会の事務局説明資料では、以下の提案が示された。

 

<「推奨・期待される事項」のアウトライン(案)の適用対象>

出典:ベンチャーキャピタルに関する有識者会議(第2回)
資料1「事務局説明資料」(2024年5月28日)[2]の4頁をベースに筆者らにて作成

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(すが・たかひろ)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー。2009年 京都大学法科大学院卒業。2010年弁護士登録(第二東京弁護士会)。2014年7月~2015年6月 外資系証券会社投資銀行本部出向勤務。2016年8月~2017年5月米国University of California, Berkeley, School of Law (LL.M.)へ留学。

 

(いなむら・しょうご)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2014年創価大学法学部卒業。2017年東京大学法科大学院卒業。2019年弁護士登録(第二東京弁護士会)。

 

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