AIが生成した文献が特許性に与える影響等についての
米国特許商標庁(USPTO)の意見募集
アンダーソン・毛利・友常法律事務所*
弁護士・弁理士 後 藤 未 来
弁理士 市 川 祐 輔
1 はじめに
AIの急激な発展により、発明を保護・利用する特許制度にも大きな影響が出ることが想定される。たとえば、AIは、低コストかつ迅速に大量の技術文献を生成できるところ、これらの文献が公開された場合に、他の特許出願の特許性を否定しうる先行技術文献として扱われるのか、その場合に生じる実務上の課題はどのようなものかといった点が問題になりうる。特に、米国の特許出願審査においては特許出願人にIDS(Information Disclosure Statement)の提出義務があるところ、AIが生成した文献であることの調査義務も仮に課されることになれば、手続的にも出願実務に多大な影響が生じうる。
本稿では、多くの日本企業の知財戦略において重要な位置を占めうる米国の特許動向として、AIが生成に関与した文献(以下「AI生成文献」という。)とPHOSITA[1](日本でいう「当業者」)についての米国特許商標庁(USPTO)[2]による議論と意見募集[3](以下「本意見募集」という。)の概要、これに対する主要団体(CCIA[4]およびAIPLA[5])による意見概要を紹介する。
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(ごとう・みき)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー、弁護士・ニューヨーク州弁護士。理学・工学のバックグラウンドを有し、知的財産や各種テクノロジー(IT、データ、エレクトロニクス、ヘルスケア等)、ゲーム等のエンタテインメントに関わる案件を幅広く取り扱っている。ALB Asia Super 50 TMT Lawyers(2021、2022)、Chambers Global(IP分野)ほか選出多数。AIPPIトレードシークレット常設委員会副議長、日本ライセンス協会理事。
(いちかわ・ゆうすけ)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所 弁理士。2007年早稲田大学(工学博士)。2008年弁理士登録。2016年カリフォルニア州弁護士登録。
ディープラーニング、通信ネットワーク、ブロックチェーンなど主にIT関連の技術分野と特許法をはじめとする知的財産法を専門とする。
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/
<事務所概要>
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国に拠点を有する。
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