SH4608 米政府、米大手AI企業7社よりAIリスク管理に関するコミットメントを取得 後藤未来/高羽芳彰(2023/08/30)

取引法務そのほか新領域特許・商標・意匠・著作権個人情報保護法

米政府、米大手AI企業7社よりAIリスク管理に関する
コミットメントを取得

 アンダーソン・毛利・友常法律事務所*

弁護士 後 藤 未 来

弁護士 高 羽 芳 彰

 

1 はじめに

 7月21日、米政府は、米大手AI企業7社(Amazon、Anthropic、Google、Inflection、 Meta、Microsoft、OpenAI)より、AIによるリスクを管理するための取組み等に関して自主的なコミットメント(以下「本件コミットメント」という。)を得たと発表した[1]。生成AIを始めとするAI技術の開発・利用が急速に広がる中、各国におけるAI規制に関する議論も活発化している。

 たとえば、EUでは、本年6月14日、欧州議会において、生成AIの登場を踏まえたAI規則の修正案が採択された[2]。また、日本でも、内閣府が本年5月26日に「AIに関する暫定的な論点整理」を公表し[3]、文化庁と個人情報保護委員会もそれぞれ生成AIをめぐる著作権や個人情報保護法上の論点整理や注意喚起文を公表している。さらに、年内には、より幅広い論点に関する事業者向けの指針が政府により策定される見込みである。加えて、AI規制をめぐる国際的な協調の動きもあり、先般のG7広島サミットでも、生成AIについて議論するための「広島AIプロセス」が立ち上げられた[4]

 米政府による本件コミットメントは、あくまで大手AI企業7社による自主的な取組みに関するコミットメントである。もっとも、コミットメントに参加した7社は世界的にもAI技術開発をリードする企業であり、米政府が本件コミットメントについて「責任あるAI開発への重要な一歩」であり、上記「広島AIプロセス」における日本のリーダーシップを補完すべきとも位置づけていることから、今後の米国を含む主要国のAI規制の方向性を占う上でも注目される。以下では、本件コミットメントの内容を概観する。

 

2 本件コミットメントの概要

 本件コミットメントは、安全(safe)でセキュア(secure)且つ透明性ある(transparent)AI技術の開発の促進を目指すためのものとされ、より具体的には、①AIシステムのリリース前の安全性確保、②セキュリティ最優先のシステム構築、③国民による信頼獲得の3項目に分けて、AI開発において守られるべき事項等を整理している。その概要は下表のとおりである。

この記事はプレミアム向け有料記事です
ログインしてご覧ください


(ごとう・みき)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー、弁護士・ニューヨーク州弁護士。理学・工学のバックグラウンドを有し、知的財産や各種テクノロジー(IT、データ、エレクトロニクス、ヘルスケア等)、ゲーム等のエンタテインメントに関わる案件を幅広く取り扱っている。ALB Asia Super 50 TMT Lawyers(2021、2022)、Chambers Global(IP分野)ほか選出多数。AIPPIトレードシークレット常設委員会副議長、日本ライセンス協会理事。

 

(たかば・よしあき)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2015年慶應義塾大学理工学部卒業。2017年慶應義塾大学大学院理工学研究科修士課程修了。2022年弁護士登録(第一東京弁護士会)。

 

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/

<事務所概要>
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国に拠点を有する。

<連絡先>
〒100-8136 東京都千代田区大手町1-1-1 大手町パークビルディング

 


*「アンダーソン・毛利・友常法律事務所」は、アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業および弁護士法人アンダーソン・毛利・友常法律事務所を含むグループの総称として使用

タイトルとURLをコピーしました