FATFによる対日相互審査フォローアップ報告書(第3回)の公表
アンダーソン・毛利・友常法律事務所*
弁護士 森 下 国 彦
弁護士 山 田 智 希
1 はじめに
FATF(金融活動作業部会)は、日本におけるマネーロンダリング等の対策に関する国際基準(FATF勧告)の履行状況について、2024年10月10日、対日相互審査フォローアップ報告書(第3回)(以下「本FU報告書」という。)を公表した[1]。
日本は、2021年に公表されたFATFの第4次対日審査報告書(以下「第4次対日審査報告書」という。)において、2012年に改定されたFATF勧告[2](以下「本勧告」という。)における40の勧告の一部についてその履行が不十分であるとされた。わが国は、この指摘に対応すべく法令等の整備を進めてきたが、本FU報告書では、そうした取組みを踏まえ、第4次対日審査報告書において日本の履行状況の評価がPC(Partially-Compliant/一部適合)とされていた項目の一部についてLC(Largely-Compliant/概ね適合)に格上げされており、FATF勧告へのわが国の一連の対応について国際的に一定程度評価がなされたものとみることができる。
もっとも、FATFに関しては2028年に予定されている第5次対日相互審査のオンサイト審査も控えており、日本としてはマネーロンダリング等についてさらなる対策の強化を進めることが求められている。そこで本稿では、FATF勧告以降の日本の取組みおよび本FU報告書における評価について整理したうえ、今後の対策強化に向けた動向について概観することとしたい。
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(もりした・くにひこ)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー。1981年東京大学法学部卒業。1986年弁護士登録(第二東京弁護士会)。1993年東京大学大学院法学政治学研究科修士課程(専修コース)修了。金融法委員会委員(現共同代表)、金融法学会理事。金融商品取引法、投信法、銀行法等の金融規制法に関する相談案件を数多く扱う。
(やまだ・ともき)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2017年東京大学法学部卒業。文部科学省勤務を経て、2018年弁護士登録(第二東京弁護士会)。コーポレートガバナンス、国内外のM&A・組織再編、コーポレートファイナンスのほか、宇宙・航空、教育関連のビジネスの法的サポートを中心に扱う。
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/
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アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国に拠点を有する。
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