SH5240 ベトナム:ベトナムにおける紛争手続きのIT化(下) 井上皓子(2024/12/12)

そのほか

ベトナム:ベトナムにおける紛争手続きのIT化(下)

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 井 上 皓 子

 

(承前)

4 ベトナム国内裁判所のオンライン提出システム

 一方、ベトナムでは、国内裁判所において、すでにプラットフォームでの申立は導入されていた(2018年11月から一部裁判所で、2022年から全国で運用を開始。)。

 国内裁判において、プラットフォームによる提出がどの程度活用されているのかについてのまとまったデータは存在しないが、実際にはあまり活用されていないとの意見も聞かれる。その理由としては、大きく以下の点がある。

  • 電子署名認証:オンラインで提訴する場合、政令に従って当局が発行・承認した電子証明書を使って電子署名を認証するというステップを含む必要があり、手続きが煩雑になる。とはいえ、近時は他の公的申請でも電子署名を必要とするオンライン申請が広がっており、電子署名の広がりによってこの点は克服される日も近いかもしれない。
  • 裁判所からの書面要請:プラットフォームを通じて書面を提出した場合でも、裁判所から原本を紙媒体で提出することを求められるケースが散見されるとのことである。
  • プラットフォームの機能性の悪さ:裁判所のプラットフォームでは、受理の状況をはじめとする進捗状況を確認するe事件管理は対応していない。提訴や書面提出を行った場合も、書面の提出・受理を証明することができない。また、書面を提出した際などは即日打ちがうたわれているが、実際には、通知がタイムリーに送付されなかったり、提出したはずの書面・証拠が確認されていない等の問題も発生していると聞かれる。これらの技術的な使い勝手の悪さも、プラットフォームの使用を敬遠する理由となっているようである。

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(いのうえ・あきこ)

2008年東京大学法学部卒業。2010年東京大学法科大学院修了。2011年弁護士登録(第一東京弁護士会)。2018~2020年、長島・大野・常松法律事務所ハノイ・オフィス勤務。日本における人事労務対応、紛争・不祥事対応、ベトナムにおける日本企業の事業進出・人事労務問題等への法的アドバイス、現地における企業活動に関する法務サポートを行っている。

 

 

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