監査役協会、「『監査役会等の実効性評価』の実施と開示の状況」を公表
アンダーソン・毛利・友常法律事務所*
弁護士 塚 本 英 巨
弁護士 山 田 智 希
弁護士 津 田 桃 佳
1 はじめに
近時のコーポレート・ガバナンスに関する活発な議論の中で、監査役そして監査役会等[1]のパフォーマンスをどのように向上させその機能を十分発揮させるべきかという点に注目が集まっている。その一環として、近年、監査役会等の実効性評価への関心が高まりを見せている。監査役会等の実効性評価は、取締役会の実効性評価と異なり、東京証券取引所が公表しているコーポレートガバナンス・コードにおいて明示的に要請されている事項ではないものの、監査役会等のパフォーマンス向上に向けた取組みの一つとして実践例が増えつつある。そうした中、2024年11月12日、日本監査役協会ケース・スタディ委員会[2]は、「『監査役会等の実効性評価』の実施と開示の状況」(以下「本報告書」という。)を公表した[3]。
これまで、具体的にどの程度の数の企業が監査役会等の実効性評価を実施し、どのような取組みがなされているのかといった実情は、法令等において監査役会等による実効性評価に関する取組みの開示を直接要請する規定が置かれていないこともあり、必ずしも明らかではなかった。本報告書は、上記委員会が、2024年5月下旬から6月に上記協会会員の上場会社(うち1,113社が回答)に対して行ったアンケート調査(以下「本調査」という。)および有価証券報告書の開示内容の調査を行った結果に基づき、監査活動の振り返りおよび監査役会等の実効性評価の実態を明らかにするとともに、今後の監査役会等の実効性評価の取組みに関する提言を行うものである。提言の概要は以下の図1のとおりであるが、監査役会等の実効性評価に関する実態に即したこうした提言は、各企業において今後監査役会等による実効性評価の取組みの検討を進める上で大いに参考になり得るものといえる。
そこで、本稿では、本調査においてどのような実態が明らかとなり、それを踏まえて本報告書においてどのような提言がなされているかを簡潔に紹介する。
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(つかもと・ひでお)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー弁護士
2003年東京大学法学部卒業、2004年弁護士登録。2010年~2013年に法務省民事局へ出向し、平成26年会社法改正の企画・立案を担当。また、2016年~公益社団法人日本監査役協会「ケース・スタディ委員会」専門委員、2017年~2022年経済産業省「コーポレート・ガバナンス・システム(CGS)研究会(第2期・第3期)」委員、2019年~2021年経済産業省「新時代の株主総会プロセスの在り方研究会」委員、2024年経済産業省「『稼ぐ力』の強化に向けたコーポレートガバナンス研究会」委員。主に、M&A、取締役会改革・株主総会対策をはじめとする会社法およびコーポレート・ガバナンス、紛争対応を扱う。
(やまだ・ともき)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2017年東京大学法学部卒業。文部科学省勤務を経て、2018年弁護士登録(第二東京弁護士会)。コーポレートガバナンス、国内外のM&A・組織再編、コーポレートファイナンスのほか、宇宙・航空、教育関連のビジネスの法的サポートを中心に扱う。
(つだ・ももか)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2021年東京大学法学部卒業。2022年弁護士登録(第二東京弁護士会)。主に、コーポレート・M&A、労務及び訴訟案件等に携わっている。
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/
<事務所概要>
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ハノイ、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国およびロンドン、ブリュッセルに拠点を有する。
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