欧州委、外国補助金規制の実施規則を公表
〔企業の通知・報告義務の詳細を規定〕
弁護士法人アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業
弁護士 臼 杵 善 治
弁護士 松 本 千 佳
1 はじめに
欧州委員会(European Commission)は、2023年7月10日、外国補助金規制[1](Foreign Subsidies Regulations、以下「FSR」という。)に関する実施規則[2](以下「FSR実施規則」という。)を公表した[3]。このFSR実施規則は、FSRの適用に関する実務上および手続上の詳細なルールを明確化するものである。このFSR実施規則に関する原案は、2023年2月6日に公表され、1か月間意見募集が行われていた。この意見募集においては、企業・団体・法律事務所等から、企業に課される事務負担を懸念する意見が出されていたようである。これらの意見を受けて、FSR実施規則では、企業に課される事務負担を一部緩和する内容となった。なお、外国補助金規制は、2023年7月12日から適用が開始された[4]。
以下、FSRの概要および今般公表されたFSR実施規則の概要をご紹介する。
2 FSRの概要
FSRは、欧州委員会が、EU域外の国々がEU域内で事業を営む企業に対して外国政府等から供与されている資金的貢献について調査する権限を与え、その歪んだ影響を是正することを可能にするための規制であり、具体的には、企業結合もしくは公共調達にかかる事前届出制度に基づき、または職権により、これらの資金的貢献について、欧州委員会が審査するルールである。
FSRは2021年5月に欧州委員会により提案され、2022年6月に欧州議会と欧州理事会で記録的な速さで合意された。FSRは、2023年1月12日に発効し、2023年7月12日から適用されたが、事前届出義務は、2023年10月12日以降に適用されることになる。
事前届出義務の要件としては、企業結合の場合、対象会社等の直近事業年度のEU市場における売上高や過去3年間に付与された資金的貢献の合計額を、公共調達の場合には、契約金額等や過去3年間に付与された国ごとの資金的貢献の合計額を考慮して閾値が設定されている。
FSRに基づく事前届出義務の内容については、以下の図も参照されたい。
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(うすき・よしはる)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業パートナー。2003年慶應義塾大学法学部卒業。2006年慶應義塾大学法科大学院卒業。2008年弁護士登録(第一東京)。2015年University of London, LL.M. in Competition Law修了。公正取引委員会による審査手続対応、海外当局による調査手続対応、国内外の競争法当局に対する企業結合届出のサポート、競争法コンプライアンスマニュアル作成・競争法コンプライアンストレーニング、流通取引規制に関するアドバイス、景品表示法対応等の多数の案件を取り扱っている。
(まつもと・ちか)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業アソシエイト。2020年一橋大学法学部法律学科卒業。2022年弁護士登録(第一東京弁護士会)。
<事務所概要>
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